鉄のまちから技術発信

 製鉄、製鋼を中心とする室蘭港の産業基盤は、高度な技術力や研究開発力を持つ中小の製造業、建設業を集積させた。デジタル化の波など企業を取り巻く環境が変化する中、各社は技術開発や人材育成に積極的だ。室蘭テクノセンターは「ものづくり創出支援」や「デジタルトランスフォーメーション推進支援」でそれらの挑戦を資金面から後押ししている。

 各社の取り組みを紹介する。(室蘭支局 星野 貴俊記者)

鉄のまちから技術発信2(1)アールアンドイー 老廃スクラップで鋳物製造手法確立

2022年01月25日 17時00分
 製鉄、製鋼業の2大産業の下で発展した室蘭地域。変化の時代を迎え、地域に根差す企業は生き残りをかけて新たな挑戦を続ける。室蘭テクノセンターは「ものづくり創出支援」で各社の新技術開発や市場開拓、創業などをサポートする。2021年度の2次募集に採択された、登別市内に本社を置く3社の取り組みを紹介する。

 1985年に創業した産業廃棄物処分業。特定建設業の許可も持つ。市内富浦に130万m³の処分施設を所有し、年間9万㌧の産廃処理を請け負い、4万㌧を埋め立てている。

 施設に持ち込まれる老廃スクラップに着目し、開発の芽育成支援で昨年から着手した「老廃スクラップを原材料とした鋳物製品の製造手法と品質に関する研究開発」は、室蘭工大大学院工学研究科の清水一道教授との共同研究だ。

 鋳物の原材料となる鉄スクラップには鋼材加工から発生する加工スクラップが使われるが、製鉄業の脱炭素で電炉への切り替えが進み、加工スクラップの価格が上昇。発生量が多く販売単価が安い廃棄物の老廃スクラップを代替利用できれば、全国の鋳造業に普及する可能性がある。

老廃スクラップのリサイクル技術確立を目指す原さん

 ただ、素材が不均一で、塗装やメッキなど不純物が付着しているといった課題がある。研究開発ではこれを解消することで老廃スクラップを鋳物原料とするサイクルの形成を目指す。

 責任者を務める研究開発部主任研究員の原宏哉さんは「実現までには数年かかるが、対象物の絞り込みができた。近く室蘭工大でサンプルを作り溶解試験を始める。年度内に成分などを従来品と比較するところまで進めたい」と展望する。

 同社の主力は埋め立てを中心とする環境事業だが、将来を見据えてエンジニアリング事業、建材事業、金属事業にも取り組む。今回の試みは金属事業の一環となる。

 「社会全体の流れで今後、ごみの発生量は減る。SDGsの目標12・つくる責任、つかう責任で大手のリサイクルは進むが、中小はすぐに対応できない。今後はそうした企業を支えられれば」と話す。

 原さんは、日大生産工学部で微生物の研究を専攻。同社に入社後、11年から社会人ドクターとして室蘭工大で耐摩耗性金属の研究に取り組み、14年に工学博士となった。

 企業理念に『埋め立ては処分ではなく再資源化までの保管庫』を掲げる。「地域に集積する高い技術を持つ企業や研究機関と連携しやすいのも登別に拠点を置く強み。技術が確立できれば、過去に埋めた老廃スクラップを掘り起こしてリサイクルしたい」と意気込む。


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