日本製鉄室蘭製鉄所構内に本社を置く鉄鋼業。1961年に幌清建設として創業した。日本製鉄の協力会社として製鋼工場の製造ラインに携わり、銑鉄の不純物除去、鉄の成分調整、構内鉄道の運転、電気炉の操業など幅広い業務を担っている。構内で土木、建築工事を手掛けるため、建設業許可も取得している。

プレゼンテーション画面の前で、
新たなチャレンジが楽しいと話す神野課長
室蘭工大と共同で取り組むのは、スマートウインドウの開発。ものづくり創出支援の「開発の芽育成支援事業」に採択された。地域の企業として、産学連携による雇用維持拡大や創出に貢献したいとの思いから、6月28日に同大と共同研究契約を締結した。
スマートウインドウは電気、光、熱など外部からの刺激で色が変わる窓で、調光ガラスとも呼ばれる。電気を使った技術が実用化され、ボーイング787の機内窓で採用された。
同社と室蘭工大が選んだのは温度応答性水溶液を使った技術の実用化。温度の上昇で水溶液が白濁する性質に着目し、同大の馬渡康輝准教授が研究を進めてきた。
建築物の窓ガラスに応用できれば、気温が高い季節や時間帯に光の透過率を下げて直射日光を遮ることが可能だ。冷房費の削減につながり脱炭素にも貢献できる。
実行責任者の神野洋明業務部技術企画課長は「大型の実験器具を製作し、遮光、遮熱の効果が最大になるよう水溶液の調整を進めている。数年をかけて実用化にめどをつけ、国内の複層ガラス市場への参入を目指したい」と大きな目標を掲げている。
事業を進める技術企画課は、社として新しい技術を持ちたい-との思いから2020年4月に創設した。今回の技術開発の主目的は地域への貢献だが、国内で進む製鉄所の再編など同社を取り巻く環境の変化に対応するという側面もある。
「事業を通じ、挑戦できる人材を育成することも目標。当社の一番の強みは現場の最前線で積み上げてきた経験と技術。蓄積したノウハウを新たなものづくりにつなげたい」と意欲を見せる。
(北海道建設新聞2021年8月4日付11面より)