鉄のまちから技術発信

 製鉄、製鋼を中心とする室蘭港の産業基盤は、高度な技術力や研究開発力を持つ中小の製造業、建設業を集積させた。デジタル化の波など企業を取り巻く環境が変化する中、各社は技術開発や人材育成に積極的だ。室蘭テクノセンターは「ものづくり創出支援」や「デジタルトランスフォーメーション推進支援」でそれらの挑戦を資金面から後押ししている。

 各社の取り組みを紹介する。(室蘭支局 星野 貴俊記者)

鉄のまちから技術発信(2)太平電気 ロボットで棒鋼マーキング探傷部自動研削

2021年08月24日 12時00分

 1957年に設立した電気工事を主とする建設業。日本製鋼所の協力会社として長年、工場内にある産業機械の整備に携わり、高水準の要求に応えてきた中で技術を蓄積した。主要な取引先は日本製鋼所M&Eで、室蘭市からも受注する。電気設計と機械設計の両方を扱う設計部があり、産業機械を組み合わせたシステムをオーダーメードで提供できるノウハウを持つ。

 今回、ものづくり創出支援の「製品・技術事業化支援事業」で取り組むのはロボットによる棒鋼マーキング探傷部自動研削実証試験装置の開発。他社との差別化を図るため2019年に参入したロボットシステムインテグレーター(SIer)事業の一環として進める。

庄司技術顧問(左)と石川課長。
製作中のシステムと

 棒鋼の製造工程では、木材にかんながけをするように、表面の細かな傷を取り除く作業が必要となる。室蘭市内の工場は全て手作業で、マーキングした箇所をグラインダーを使い長時間かけて行う。きつい、汚い、危険の3Kと呼ばれる仕事だ。

 自社で培った技術を生かし、これを改善するのが事業の目標。アーム型産業用ロボットを使って20年度に開発した溶接痕研削システムに改良を加え、道立総合研究所の助言も受けながら実証試験装置の製作を進める。

 事業を担当する庄司浩技術顧問は「これまでに3Dレーザーセンサーに関する知識などを習得した。今はランダムに配置したマーキングをロボットに正しく画像認識させるための実験を繰り返している」と話す。

 今後、画像認識率が高まれば、カメラの画像を人が見ながら遠隔操作でロボットを使って研削するアバター技術にも取り組みたいという。実現すれば、力の弱い女性でも画面を見ながら安全に作業できるようになる。

 事業の責任者を務める石川宏平設計部設計課長は「SIerの普及率は道内ではまだ低く、事業を成功させて当社のような中小企業でもできるということを発信したい。魅力ある会社となることで、若い人が来てくれるきっかけになれば」と期待する。

(北海道建設新聞2021年8月3日付11面より)


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