鎌倉、南北朝期の随筆家で歌人の吉田兼好は歯に衣着せぬ人物だったらしい。代表的著作『徒然草』のこの一節に覚えのある人も多いのでないか。「万の事は頼むべからず。愚かなる人は、ふかくものを頼むゆえに怨み怒る事あり」
▼つまり、何でもかんでも他に頼ろうとするな。愚か者は依頼心が強すぎるあまり勝手に裏切られた気になり恨んだり怒ったりする、というのである。なかなか手厳しい。痛い所を突く。愚か者かどうかは別にして、人とはそういうものだろう。解決すべき問題があるのに自分ではどうしていいか分からなくなったとき、頼りにしていた相手に批判の矛先を向けがちだ。今月の各社世論調査を見て、その思いを新たにした
▼菅内閣の支持率が軒並み落ちているのである。18日発表の読売新聞が支持39%、不支持49%、13日のNHKがそれぞれ40%、41%、10日の共同通信が41.3%、42.8%。いずれも先月調査と支持、不支持が逆転した。頼りにしていたのに…、といったところか。確かに政府のコロナ対応には非難されても仕方ない部分はある。ただ現在も日本は欧米主要先進国より感染者も死者も格段に少ない。野党やマスコミはいたずらに政府批判をあおりすぎてはいないか
▼民主党の菅直人内閣が東日本大震災後、自社さ連立の村山富市内閣も阪神淡路大震災後、支持率を著しく下げたのを思い出す。前例のない事態に対処するのは難しい。今は全ての面で分断より協力が必要なときである。国会がきのう始まった。一丸となって立ち向かう機運は醸成されるのだろうか。