コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 162

立憲と国民の結婚話

2020年01月15日 09時00分

 生涯未婚率が年々上昇しているそうだ。国立社会保障・人口問題研究所などの推計によると、2015年に男性22.7%、女性13.6%だったのが30年には男29.5%、女22.5%に達するという

 ▼多様な生活を尊重する観点から結婚しないことへの社会的圧力が減ったことや、お見合いのような慣習的枠組みが敬遠される傾向にあることが影響しているらしい。ただ結婚できない男女には共通する特徴もあるようだ。それはお金への過剰な関心、強い自己主張、相手への非寛容な態度だという。ウェブでいわゆる「婚活」サイトを幾つか見たが、典型例として挙げられていた。つまりは理想と現実の差が大き過ぎるのだろう。お互い結婚はしたいが、妥協はしたくないのである

 ▼この話、個人だけではなく組織にも通じるところがありそうだ。立憲民主党と国民民主党の合流である。こちらも昨年は幸せな結婚を夢見て機運がかなり高まったものの、付き合ううち理想と現実の乖離(かいり)に気付いたとみえる。立憲としては民進党から引き継いだ国民の潤沢な政治資金がほしい。国民は主導権を持ったまま力を増したい。双方とも「わが方の政策こそ正しい」と考えているため妥協するつもりもない。これでうまくいく方が不思議である

 ▼立憲の枝野幸男、国民の玉木雄一郎両代表が10日、直接会談したが、物別れに終わったそうだ。もともと安倍政権を倒したいがために形ばかりの結婚を目指し、あわよくば金も力もともくろんだのが実際のところでないか。まあ政略結婚とは得てしてそういうものだが。


箸墓古墳をミューオンで調査

2020年01月14日 09時00分

 昔の特撮テレビドラマの主題歌で「どこの誰だか知らないけれど 誰もがみんな知っている」(『月光仮面は誰でしょう』川内康範作詞、小川寛興作曲)と歌われたヒーローがいたが、この女性もその歌詞にぴったりでないか

 ▼2世紀後半から3世紀前半にかけて倭国(日本)の一大勢力「邪馬台国」を統治した女王卑弥呼である。誰もが知る名前なのに、どこに国があったのか、どんな人物だったのか、謎のままだ。日本が国としてまとまっていく出だしの重要な歴史事象だけに、興味を持っている人も多いだろう。ところが卑弥呼の存在は中国の史書「魏志倭人伝」に語られているのみで、日本国内では証拠などがほとんど見つかっていない

 ▼この謎の一端が最新の技術によって、遠からず明らかになるかもしれない。奈良県立橿原考古学研究所が現在、卑弥呼の墓との説もある同県桜井市の箸墓古墳の内部調査を進めているのである。発掘をするのでなく、素粒子「ミューオン」を使って中を透視するそうだ。ミュオグラフィという技術で、火山くらい巨大な物体でもレントゲンのように内部を画像化できる。宇宙線が大気と衝突して透過力の強いミューオンが生じる現象を利用したものだ。クフ王のピラミッドで未知の空間を発見した実績もある

 ▼箸墓古墳は皇族の墓だとして宮内庁は原則発掘を認めていない。古代の扉はすぐそこにあるのに開くことができなかったのである。もし卑弥呼の墓と分かれば古代史は大きく書き換えられる。どこの誰が眠っているのか、証拠となるしるしが見つかるといい。


日本と石油

2020年01月10日 09時00分

 四方を海に囲まれた日本には小さな島が多い。総務省の離島振興対策実施地域概要によると、本州と北海道、四国、九州、沖縄本土を除く離島は実に6847島。このうち人が日常的に住む有人島は418島あるという
 
 ▼そこで島民が頼りにするのは船である。移動手段としてはもちろん、島にはない生活物資を運び入れるのにも必要だ。食料や燃料、各種資材、地域によっては飲料水も外から持ち込まねばならない。それだけに、しけが長引くと大ごとだ。船の能力が格段に向上した現代はそう深刻な事態に陥ることもないが、昔は相当過酷な生活を強いられた。文字通り生命線が断たれるのだから当然である

 ▼ところで今、これと似たことがまた起こりつつあるのに気づいている人もおられよう。日本が石油輸入の85%を頼る中東で米国とイランの軍事衝突が懸念されているのである。石油はわが国の生命線。紛争で船運が滞るとエネルギーはもとより、物流や生活必需品の製造などあらゆる方面に影響が出る。米軍によるイラン革命防衛隊の司令官殺害が発端だった。西側から見ればテロリストだがイランにとっては英雄だ。報復宣言したイランは7日に米軍駐留のイラク基地を攻撃。トランプ大統領は反撃に抑制的だがいつ何をするか

 ▼この間、日本では株価が乱高下し、ガソリン価格も上昇傾向。原子力発電所もほぼ止まっているため長引けば電気料金にも跳ね返ってこよう。経済大国として世界に冠たる日本も、エネルギー安全保障の分野ではいまだ離島である現実を思い出さないわけにはいかない。


火葬を問い返す

2020年01月09日 09時00分

 「正月は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」。その一休禅師の句に倣ったわけではあるまいが、札幌市は今月末まで火葬場・墓地のあり方基本構想についてパブリックコメントを募集している

 ▼構想は、市民が葬送を考えるきっかけとなるよう作成。今後訪れる高齢者の急増による「多死社会」の本格化に伴って起こる火葬場の過密・老朽化対策、時代の変化に応じた墓地の維持管理等の課題を示した。内容はこれまでの火葬や墓地の存在を前提としている。しかし持続可能な社会「SDGs」が目指される中で、火葬という葬送方法、墓地という埋葬方法そのものが問われてきている

 ▼火葬は大量のエネルギーを消費し、地球温暖化につながる二酸化炭素が発生するため、環境に優しい葬送とはいえない。札幌市は、現在葬送方法として火葬のみを認めているが、その前提を思い切って見直す時期に来ているのではないか。墓じまいの増加に象徴されるように墓地の維持も深刻な問題になっている。葬送の見直しは世界的な傾向で、近年海外では多様な方法が試行されている。少々驚きだがスウェーデンでは遺体を液体窒素で凍結させてフリーズドライにする手法が実用化されている。米ワシントン州は「人間の遺体を堆肥にする」ことをことし5月に全米で初めて合法化する。木材のチップ、ワラの入ったコンテナに遺体を入れ微生物の力で安全な堆肥にするという

 ▼18年「SDGs未来都市」に選定された札幌市も全国に先駆けて新しい技術を生かし、葬送方法の多様化を検討してはどうか。


政界IR汚職疑惑

2020年01月08日 09時00分

 ことしはねずみ年である。干支の解釈は別にして、ねずみと聞いてまず思い浮かべるのは小さな生き物であることと、個体数が急速に増えることだろう。小ささを一際強調したことわざに「大山鳴動してねずみ一匹」があり、瞬く間に数が増えるさまを表す言葉に「ねずみ算式」がある

 ▼その年だからというわけではあるまいが、この事件も「ねずみ一匹」で終わりかと思いきや、関係する人物がどんどん増えていく。このところ世間を騒がしているカジノを含む統合型リゾート(IR)事業を巡る贈収賄疑惑の話である。おととい、日本維新の会の下地幹郎衆院議員が記者会見し、中国企業「500.com」側から提供された現金100万円を受け取っていたと認めた

 ▼この事件では東京地検特捜部に収賄の疑いで逮捕された自民党の秋元司衆院議員の他、同じく自民党の4人の国会議員と下地氏の名前が挙がっていた。「500」社側の供述による情報だそうだが、下地氏以外はいずれも受領を否定している。東京地検はさらに、別の議員らへの聴取も進めているようだ。疑惑の人脈はねずみ算式に膨らんでいる。とはいえ今のところ逮捕は秋元氏のみで、名前の挙がった人も、もし受領していたとしても職務権限がないため政治資金規正法違反程度にとどまる見込みらしい

 ▼そうそう、ねずみといえばもう一つ特徴的なイメージがあった。『ゲゲゲの鬼太郎』の妖怪「ねずみ男」に代表される小ずるさである。国会議員には中国企業の裏金で転ぶようなひきょうな人物などめったにいないと信じたいが…。


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