コラム「透視図」

ガウディの夢

2016年03月03日 09時32分

 ▼スペインのバルセロナ市で着工から134年たった今も完成していないサグラダ・ファミリア贖罪(しょくざい)教会を知らない人はいないだろう。建築家アントニ・ガウディが構想した巨大聖堂だ。世界遺産でもある。図面や模型が少なく造形も複雑なため完成まで300年かかるといわれてきた。ところがその工期が大幅に短縮されているという。現在は2026年完成に向け工事が進んでいるそうだ。

 ▼秘密は潤沢な資金とITを使った建築技術にあるとのこと。先日、札幌市内で上映されたドキュメンタリー『創造と神秘のサグラダ・ファミリア』に教えられた。同教会には毎年、世界中から300万人を超える観光客が訪れるらしい。この拝観料収入が最先端技術の導入を可能にしたのである。ガウディの独特なデザインを実現するためにCADは建築用でなく航空機用を採用。石材はコンピューター制御の切削機で加工し、複雑な部材は3Dプリンターで形成するといった具合だ。

 ▼石造に見えて実はRC造というところも多いそう。一方で40年近く建築に携わってきた彫刻家の外尾悦郎さんは、石が自分を動かし像が生まれるのだと話していた。そんな職人の技が尊ばれる場でもあるのだ。外尾さんは『ガウディの伝言』(光文社新書)に、観光客が増えたのは1992年バルセロナ五輪からだったと記している。こちらもレガシー(遺産)になれるといいのだが、と願わずにいられない。東京五輪に向け、日本の新国立競技場はことしから本格的な設計に入った。


公共投資

2016年03月02日 10時01分

 ▼米国のサブプライムローン危機に端を発したリーマンショックはまだ記憶に新しい。2008年のことだが、当時こんな短歌があった。何かしら被害を受けたに違いない。「アメリカよりドミノ倒しの世界不況八十三歳のわれにも及ぶ」(小石原百合子)。「中国より」と始めれば今の歌になろう。世界経済に再び暗雲が垂れ込めている。グローバル経済という荒馬を世界はなかなか乗りこなせないらしい。

 ▼ただ各国協調して手綱をしっかり持とうとはしているようだ。20カ国財務相・中央銀行総裁会議は2月27日、世界経済を成長させるため全ての政策手段を用いる、との共同声明をまとめた。経済の減速に立ち向かおうと足並みをそろえたわけだ。金融政策と構造改革をこれまで通り進めるほか、それだけでは不十分として、経済下支えと雇用創出のため「機動的に財政政策を実施する」方針を強く打ち出した。日本でも成長戦略としての公共投資が見直されることになるのではないか。

 ▼そうなるとまた大合唱が始まりそうだ。公共投資をすると国の借金がさらに増える、との公共悪玉論である。数量分析家の高橋洋一嘉悦大教授は『数字・データ・統計的に正しい日本の針路』(講談社)で、国のバランスシートの負債にしか目を向けないのが間違いと指摘している。資産と相殺すれば、借金が危機的とする論は「滑稽」だという。その分析は興味深い。経済成長は多くの社会問題を解決する。不況で嘆く人を出さないために、公共投資が有効なら積極的に役立てたい。


大荒れ

2016年03月01日 08時54分

 ▼きのうは普通ならうるう年でもうけものの1日になるはずだったが、こんなおまけならいらない、と思った人も多かったのでないか。本道は29日から大荒れの天気になり、ほぼ全域で暴風雪が吹き荒れた。比較的気温が高かったため、びしょ濡れになりながらようようの体で職場や学校にたどり着いた人もいよう。当方もその一人である。吹き付ける雪で眼鏡も役に立たず、諦めてポケットにしまい込んだ。

 ▼前線を伴う低気圧が急速に発達しながら本道を通過したとのこと。大気が相当不安定になっていたのだろう。きのうは吹雪の中、時折、雷も鳴った。「身の殻に入りたくなる冬の雷」(杉浦一枝)。突然の雷に肝を冷やした人も少なくなかったはず。札幌管区気象台によると、きょうは冬型の気圧配置が強まり、引き続き広い範囲で暴風雪になる見込みだそう。屋外の現場で作業している人にとっては難儀なことである。天候の急変にはくれぐれも注意し、無理などせぬよう願いたい。

 ▼そんな悪天のせいでおまけの日を味わう余裕もなく、きょうから年度末3月に突入である。決算に、納期にと、何かと慌ただしい月だろう。政界でも民主党と維新の党が野党再編の総決算とばかりに、今月中の合流を正式決定したそうだ。ぎりぎり間に合ったというところか。新党立ち上げに期限があるわけではないが、夏の参院選を考えれば4月から一枚岩で選挙対策を打てるのは大きい。といっても野合批判あり、両党内で政策の違いありと、当面は大荒れが続きそうな気配だが。


ゆうばりの映画祭

2016年02月27日 09時40分

 ▼ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の季節がまた巡ってきた。夕張市の財政破綻後に再生した映画祭は、長く親しまれてきたメーン会場アディーレ会館が老朽化により閉館するという新たな困難に直面していた。選んだメーン会場は、山の上にある夕張北高を改装した「合宿の宿ひまわり」の体育館だった。鈴木直道市長が「バスケットボールもできる映画祭の会場」と笑いをとっていたユニークな会場だ。

 ▼ことしのオープニング上映は、平山秀幸監督の「エヴェレスト 神々の山嶺」。前人未到のエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む登山家の羽生と、その姿を追う山岳カメラマンの深町の生き様を描く作品。岡田准一、阿部寛、尾野真千子は、邦画で初めて標高約5000mでの撮影に挑んだ。CGでは決して感じられない臨場感ある映像が、映画を盛り上げる。あまりの迫力に見終わっても言葉が出ない。世界に誇れる山岳映画の誕生。その妥協のない制作姿勢に、深く感動した。

 ▼平山監督は上映の前に「夕張に、10年ぶりに新作を持って帰って来れたことが何よりうれしい。夕張はヒマラヤと同じくらい寒く、ふぶいていた。ふぶかなければ夕張ではないと思った」と話していた。吹雪の中、山の上の会場で山岳映画の上映が行われるとは。ハンディをプラスに変えた、こんなにもスリリングな映画祭があるだろうか。市民が「お帰りなさい」と迎え、映画人とファンが気さくに交流する楽しく温かな夕張の映画祭は、一方では困難に果敢に挑戦する映画祭でもある。


二・二六事件

2016年02月26日 09時11分

 ▼子どものころ「正義」という言葉は身近なものだったが、「大義」は聞いたことがなかったように思う。もっとも正義とはいっても、月光仮面や仮面ライダーといった「正義の味方」の話で、当時は正義も大安売りの感があった。先の大戦を思い起こさせる大義は戦後、日本の奥深くに沈められたようだ。その大義を勇ましく掲げ、軍部が暴走するきっかけにもなった二・二六事件からきょうで80年である。

 ▼この事件は、困窮する農村を放置する政府に義憤を感じた青年将校たちが、国家改造のために立ち上がったクーデターとされる。「君側の奸」として現役閣僚を殺害した上、宮城を占拠して天皇の同意を得ようとの狙いだったらしい。しかし天皇はこの暴挙にいささかも心を寄せることなく怒り、クーデターは失敗に終わった。ところがこれ以来、軍部は決起の再発をちらつかせながら政財界を脅し、軍部独裁の地歩を固めていったというのだから、歴史というのは皮肉なものである。

 ▼作家佐藤優氏は『大人のための昭和史入門』(文春新書)で、二・二六事件をイスラム過激派組織ISとの類比で解釈する。不正がはびこる社会を革命で理想の場所にしたいとの大義は、いつの世でも若者には魅力だというのだ。「大義に殉じるという思想は強い感染力をもつ」と警鐘も鳴らす。正義の味方に憧れるくらいならかわいいものだが、大義の大安売りが始まると、命もたたき売られる。ISを見てもそうだろう。愚を繰り返さぬために、事件から学べることは少なくない。


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