学校教育でよく使われる音楽カリキュラムに合唱がある。全員が呼吸を合わせ、それぞれの声の個性を生かしながら一つのハーモニーを作り上げるところが教育となじみやすいのだろう
▼50年ほど前、筆者が小学生のころは『気球にのってどこまでも』(東龍男作詞、平吉毅州作曲)を練習した。「ときにはなぜか 大空に 旅してみたく なるものさ 気球にのって どこまでいこう 風にのって 野原をこえて」。大空を自由気ままに旅することへの憧れと未来への希望を、高らかに歌い上げる曲だった。今でも歌えるくらいだから、よほど気に入っていたのである。ところがこんなニュースを聞くと、そんなのんきなことも言っていられない
▼米国領空を先頃横断していた正体不明の気球は、中国が偵察目的で飛ばしていたものだったというのである。飛行ルートにはICBMを運用するモンタナ州の米軍基地もあったという。米軍は日本時間5日午前、サウスカロライナ州沖合の領海上空で気球を撃墜した。2020年に宮城県などで目撃された白い気球も同じ形状。当時は警戒感も持たず面白がっていたが、やはり中国の偵察気球だった可能性が高い。大空を気ままに旅していると思いきや、実は地上をのぞき見していたわけだ
▼報道によると気球はコストが安い上に、偏西風に乗せると米国まで容易に到達させられるのだとか。しかもああ見えて、衛星より高精度の情報も得られるというからあなどれない。これからは先の曲を思い出すたび、習近平中国国家主席のにやり顔を想像してしまいそうだ。