コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 255

仮想通貨不正流出

2018年01月30日 07時00分

 コロンブスらが活躍した中世ヨーロッパの大航海時代には、自分の身は直接危険にさらしたくないが一獲千金は狙いたいという人々が交易船に出資したそうだ

 ▼香辛料や絹、陶磁器、金銀などを手に入れて船が無事戻ってこられれば、出資者は一生遊んで暮らせるだけの巨万の富を得ることができた。ただ、海難事故や海賊の襲撃、取引先住民とのいざこざよって失敗することも多く、成功率は20%程度だったらしい。仮想通貨取引所大手「コインチェック」から約580億円相当の仮想通貨「NEM(ネム)」が不正アクセスにより流出した事件に触れ、昔学んだ大航海時代の投機ブームのことを思い出した。今回は昨今急騰を続ける仮想通貨市場に私財を投じた人が、海賊ならぬハッカーの略奪に遭遇した格好だ

 ▼コインチェックは顧客が保有する「NEM」を預かっていたが、この管理口座をインターネットから切り離さず常時接続の状態にしていたという。いわば見える所に金庫を出しておいたわけである。サイバー犯罪に対し不用心との批判は免れまい。海賊だって大砲に守られた船より無防備な船の方が簡単に襲える。同社はおととい、保有者26万人に約460億円を返金すると発表したものの時期は不明。さてどうなることやら

 ▼当方もだがこの仮想通貨、いまだによく分からない人がほとんどでないか。大航海時代には全財産を投入した揚げ句、船が帰らず路頭に迷う人が続出した。仮想通貨も便利に使うのはいいが、わけもわからぬまま欲に駆られて大金をつぎ込むと落とし穴にはまりそうだ。


学生たちの電気自動車

2018年01月27日 07時00分

 先週の札幌モーターショー2018で、並み居る有名自動車メーカーの最新モデルと同じくらい興味をひかれたのが道内の工業系学校が出展した手作りエコカーである

 ▼外形こそ未来を感じさせる洗練されたデザインから武骨なものまでいろいろだが、いずれも学生ならではの斬新なアイデアが打ち出されているのには感心した。「近い未来、大人になった自分たちが乗りたい」北海道らしい車がテーマだったという。参加したのは5校。旭川高専の「AK―GoGo」は車体の前に雪を吹き払うファンが付く。旭川実業高の「CHOUETTE」は交通安全の願いを込めて車体をエゾフクロウに模した。道自動車整備大学校の「EV sports 02」はモーターを3つ使った4輪駆動で雪道の走破性向上を狙う

 ▼道科学大学高の「冬幻」は荷台を自由にアレンジして仕事にも遊びにも活用できる仕様。また、道職業能力開発大学校の「earth」はSF映画に出てくるような美しい曲線デザインを採用した。作品以上に目立っていたのが学生たちの熱気である。皆自信を持って紹介していた。電気自動車はシステムが単純で部品も少ないため、学生でも技術やアイデアを存分に生かせる分野という

 ▼電気自動車で世界の最先端を行く会社に米国「テスラ」がある。創業者のイーロン・マスク氏は10代のころ南アフリカから米国に移住。農場などで働きながら起業の機会をうかがい、ついに成功した人である。それが新しい技術に目を輝かせている本道の学生たちの、「大人になった」姿でも不思議はない。


最強寒波居座る

2018年01月26日 07時00分

 本道は凍てついた日が続く。きのうの午前1時ごろには、喜茂別で1月の観測史上最低の氷点下31・3度を記録したそうだ。ありがたくない記録更新である

 ▼旭川市出身の小説家木野工の随筆「凍夜の想い出」のこんな一節を思い出す。「夜中にポンポンと音がしていたのはサイダーや醤油や酒の一升ビンが破裂した音だとわかった。親父たちが鍋を持って氷ったものをそれに受けていた。酒を齧るのを初めて見た」。冬になると戸外や車庫を冷蔵庫代わり使っているお宅はいまだに少なくないのでないか。「今夜はしばれて瓶や缶が割れるかもしれないから家の冷蔵庫に移しとこう」は、笑い話のような本道の日常である

 ▼さすがに野菜まで外に置いている人は多くないと思うが、安いうちにたくさん買って保存しておけばよかったと後悔している人が今は随分と多いかもしれない。この前近所のスーパーに行ったら小ぶりのダイコンが一本200円で売られていた。びっくりするほど野菜の値段が高いのである。農畜産業振興機構の「野菜の需給・価格動向」1月15日版によると、ダイコンは1㌔当たり204円(関東圏)で前年同期比2・5倍、ハクサイが127円で1・5倍、レタスに至っては579円で3・5倍だという。10月の長雨や台風の影響なのだそうだ

 ▼これでは冬に付きものの鍋もおちおちできやしない。体を温めてくれるはずの鍋が逆に懐を寒くする。とはいえこの寒波もあと1週間の辛抱。野菜の値段も遠からず下がろう。温かい家で冷蔵庫のビールでも飲みながらしばし待つとするか。


本白根山が噴火

2018年01月25日 07時00分

 その山を描写して、作家深田久弥は『日本百名山』(新潮文庫)にこう書いていた。「ここの頂上も大きな火口を持っているが、とっくの昔活動をやめて、灌木や岩石に覆われている。それは古代ローマの円形劇場を思わせる」

 ▼日本百名山の41番目、草津白根山の本白根山(標高2171m)のことである。その山がおととい噴火し、1人が死亡、11人が負傷した。観測の対象から外れた場所での噴火だったらしい。噴火の可能性が高いとして気象庁が重点観測していたのは、今回噴火した本白根山の北約2・5㌔に位置する白根山の方だったという。本白根山は少なくとも過去1000年にわたり大きな噴火の記録がなかったそうだ。深田氏も書いていた通り「とっくの昔活動をやめて」が共通認識になっていたのである

 ▼自然の振る舞いというのは本当に予測できないものだ。平成に入ってからだけでも1991年の雲仙普賢岳、14年の御嶽山と、薄い警戒心の隙を突くかのようにこうして災害を引き起こす。亡くなったのは訓練中の陸上自衛隊員。噴石の直撃を受けたという。痛ましいことである。噴煙で視界は閉ざされ、その中を大きな石が雨あられと降るのだから遭遇した人は生きた心地もなかったに違いない

 ▼後知恵で観測体制や避難計画の不備を指摘するのはたやすいが、より大切なのは自然に対する謙虚さを思い出すことだろう。自然の大きな力の前で人間など無力に等しい。本道にも十勝岳、雌阿寒岳と活火山に近いスキー場がある。一人一人が「もしも」を考えておくに越したことはない。


関東地方で大雪

2018年01月24日 07時00分

 きのうの朝日新聞朝刊1面に、雪道を歩く際に注意すべき点が図入りで出ていた。東京都心を含め関東地方が広く大雪に見舞われたからである。内容はこうだ。「ひざを少し曲げ重心を前にし、小さな歩幅で靴の裏全体を地面につけるように」「路面をよく見て、歩き始めに注意」

 ▼道産子は体で覚えているためこの手の報道を見るとついニヤリとしてしまう。ただ雪道に慣れていない人には笑い事ではないのだろう。道路、鉄道、空港と、交通は予想以上の大混乱だったようだ。何せ都心で積雪が10cmを超えるのは2014年以来約4年ぶりとのこと。これだけ間が開くのでは本道のように行き届いた雪対策をするわけにもいくまい。難しいところである

 ▼ところでこの大雪に埋もれたのは街だけではなかったらしい。国会の存在感もである。同じ22日に第196通常国会が始まったのだが、新聞やテレビのトップニュースは軒並み大雪で、安倍首相の施政方針演説やそれに対する野党のコメントは後に回された。注目度が低いとはいえ、今の日本に国会議員を雪合戦や泥仕合で遊ばせておけるほど余裕はない。少子高齢化やデフレ、安全保障、基礎的財政収支、地方の疲弊―。待ったなしの懸案が山積している

 ▼どれもガチガチに凍っているため解決が容易でないものばかり。冷静着実に前へ進める必要がある。そこで国会議員の皆さんに少し注意すべき点をお教えしたい。「小さな歩幅でしっかり地に足を着けた議論を」「国民の期待をよく見て、審議の転倒に注意」。最近の国会はどうも横滑りが目立つ。


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