コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 257

化け物

2016年02月06日 08時50分

 ▼落語にはあきれるくらいけちで頑固なご隠居さんがよく登場する。「化けものつかい」もそんな噺の一つだが、このご隠居さんは人使いも荒い。あるとき安い物件を手に入れ、喜んで引っ越したがそこは化け物屋敷。ところが怖がるどころか、出てきたからには井戸から水くめ、掃除しろ、布団敷けと、とことんこき使う。ついには化け物が音を上げ、ご隠居さんに泣きながらいとま乞いをするオチがつく。

 ▼落語だから笑えるがこんなご隠居さんが本当に居たらたまったものでない。事実は小説より奇なりで、そんなご隠居さんも真っ青の悪質な人物が現実に居ることを最近知った。社会保険労務士の男性がブログ(Web日記)に「モンスター社員解雇のノウハウをご紹介」と題し、「社員をうつ病に罹患させる方法」を掲載していたのだという。「合法パワハラ」で精神的に追い込む策を列挙し、自殺したときのため、因果関係を否定する証拠を作っておくことまで指南していたという。

 ▼社労士は人事や労務管理の専門家として経営側に立つことが多い。問題社員を抱えた企業の悩みに応えようとしたのかもしれないが、浅慮にも程がある。企業が誠実に社員と向き合い、問題を解決できるよう適切な助言をするのが本来の役割だろう。一方的に「モンスター」のレッテルを張られた社員がこの方法で追い込まれ、自殺でもしたらどうするつもりだったのか。厚生労働省は4日、この男性に業務停止3カ月の方針を伝えたという。社労士の化け物にはお引き取り願いたい。


統計的には

2016年02月05日 10時09分

 ▼先日、札幌市内で同市主催のヒグマフォーラムがあり、知識を仕入れておこうと足を運んでみた。「市街地侵入抑制策と共存に向けて」がテーマである。そこで興味深い話を聞いた。2011年は突出して出没数の多い年だったが、実は1頭のメスが広範囲に行動していただけだったという。その後のDNA解析で分かったそうだ。当時は生息数が増えて危険だと大騒ぎにもなったが真相は違ったのである。

 ▼別の地点で目撃されたら、普通は同じクマと考えないだろう。人の目でクマの花子さんと太郎さんを見分けるのは難しい。ところが数だけは積み上がるため誤解が生まれる。統計的にはこれを因果推論の誤りというらしい。西内啓氏は『統計学が最強の学問である』(ダイヤモンド社)で面白い例を示している。次の食べ物を禁止すべきかどうか。「心筋梗塞で死亡した日本人の95%以上が生前ずっとこの食べ物を食べていた」。答えは「ごはん」だ。もちろん病気の主原因ではない。

 ▼西内氏は「十分なデータ」を基に「適切な比較」をすることが正しい答えを導くと説く。さてこちらの因果推論はどうだったか。民主党などが甘利明氏の疑惑を盾に国会審議を人質に取ろうとした件である。結果、自民党の支持率が上がり作戦は腰砕け。世論は野党が思い描いた形にはならなかった。自分たちが有権者にどう評価、比較されているかが分析から漏れていたのだろう。民主主義には政府与党に対する健全な批判勢力が欠かせないというのに、現状は何ともお寒い限りだ。


GLAYの歌

2016年02月04日 09時02分

 ▼今の時期思い出す曲の一つに、函館出身のメンバーらで構成するロックバンドGLAYが1999年2月発表した「Winter,again」がある。最大の売り上げを記録した曲だから聞き覚えのある人も多いのではないか。こんな歌詞があった。「幼い日の帰り道/凛と鳴る雪路を急ぐ/街灯の下ひらひらと/凍える頬に舞い散る雪」。きょうは暦の上で立春だが、この歌詞の方が本道の実感に近い。

 ▼ここしばらく本道は連日真冬日で、冷凍庫の中で暮らしているようなもの。天気予報によると寒さは当分の間続くらしい。あす5日開幕のさっぽろ雪まつりを楽しむ分にはいいが、屋外で仕事をする人にとっては辛抱のしどころだ。ただ春を感じさせるものがないわけではない。日は長くなった。きょうの日の入りは午後4時50分。この1カ月で40分ほど伸びている。「日脚伸ぶただそれだけで気の晴れし」(大東美子)。夕方になっても明るさが残っているのは実際うれしいものだ。

 ▼春の兆しをいち早く見つけた喜びを表す言葉に「冬萌」がある。冬のうちから芽が出ることをいうが、芽でなく歌が出るこんな「冬萌」も良いものだ。GLAYが歌う北海道新幹線開業イメージソングが1月27日に発売された。JR北海道のCMを既に見た人もいよう。「Supernova Express 2016」でGLAYは躍動感のある旋律に乗せてこう歌い掛ける。「北の街は凍えた夢を/温めてくれるよ」。新幹線開業まであと50日と少し。春は確実に近付いている。


ギネス記録

2016年02月03日 08時52分

 ▼法隆寺三代目棟梁の西岡常一は、宮大工職人の仕事をコンピューターに代えることなどできないと考えていたそうだ。相手にするヒノキは一本ずつ全部性質が違うため、癖を見抜き、それに合った使い方をしなければならないからだという。引き継がれてきた技と知恵を駆使してはじめて、創建当時の美しさを千年以上保つことができる。『木のいのち木のこころ 天・地・人』(新潮文庫)に教えられた。

 ▼法隆寺は「世界最古の木造建築物」としてギネス世界記録に認定されている。木造建築物で国内唯一だったが、最近1つ増えたことが話題になった。昨年10月に完成した山形県の南陽市文化会館である。認定は「世界最大の木造コンサートホール」。大ホールは1403人を収容できるそうだ。地元企業シェルター(山形市)が耐火性能を満たすため、木材を石こうボードで囲み、外側をさらに木材で覆う構造部材を開発して実現させたという。人の技と知恵を結集させた成果である。

 ▼ギネスといえば、道民としてはジャンプ界の「レジェンド」葛西紀明選手を忘れるわけにいかない。既に3つの世界記録を持っているが、1月31日、新たに「W杯個人最多出場488回」「ノルディックスキー世界選手権ジャンプ部門最多出場12回」の2つの認定証を受けたという。西岡棟梁は、優れた職人技には知恵が含まれていると説いていた。葛西選手も変化する雪の状態を見極めながらそんな技を磨いてきた職人だろう。ギネスは今回、そうした達人の技にも気付かせてくれた。


インフルエンザ

2016年02月02日 08時47分

 ▼風邪で寝込んでいるときに限って食べたくなる物がある、という人はきっと少なくないだろう。筆者が子どものころはミカンの缶詰だったが、人に聞くとすしだったりアイスだったりいろいろである。作家宮尾登美子にとってそれは蒸しずしだったそうだ。エッセイ「かぜひき」に書いている。「寝床でものを食べてはいけないという禁忌も、この日ばかりは大目に見て」もらえるのもうれしかったらしい。

 ▼そんなことを思い起こさせる時期がまたやってきた。インフルエンザの流行が、全国的に広がりつつある。国立感染研究所が1月29日公表した「流行レベルマップ」によると、注意報が37都府県、警報が7道府県だそう。道感染情報センターの警報はまだ根室だけだが、全道的に患者は増加傾向にあるようだ。乳幼児を持つ親御さんや高齢者を抱えた家庭は特に心配だろう。感染してもおいしいものが食べられるくらい体力があればいいが、熱が高いときは水分を取ることさえ難しい。

 ▼大切なのは感染しないことである。どうやらしっかり手洗いすることに勝る予防法はないらしい。おかしいな、と思ったらすぐに受診することだ。感染していたらすっぱり休む。宮尾登美子は「大ていの人には病臥願望というもの」があるとも書いていた。家族にいたわられ、のんびりとした時間を楽しめるからだとか。いや休むと職場に迷惑が、と気兼ねする人もいよう。サラリーマン川柳(第一生命)にこうあった。「インフルで会社休むも支障無し」。案外とそんなものである。


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