コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 261

インフルエンザ

2017年12月13日 07時00分

 ミカンが箱売りされる季節になった。店頭で見ると糖度13度以上のかなり甘い物だと3㌔で3000円を超える。ミカンが魔法のように消えるわが家では、これはなかなか手が出ない。質より量で手頃な値段の物に落ち着くのが毎度である

 ▼「蜜柑むくときは話のしやすくて」五十嵐哲也。食卓テーブルに置かれたミカンの山を中心に、家族の会話も始まる。皮と一緒に気持ちもほぐれてくるから不思議なものである。この時期のミカンがいいのはおいしいからばかりでない。免疫力を高めるビタミンCを手軽に取れるところもである。Mサイズ3個に成人1日当たり所要量の約100㍉㌘が含まれているという

 ▼これが少しでも感染を抑える力になるなら言うことはない。本道でもインフルエンザが流行し始めた。道感染症情報センターによると全道最新定点当たり報告数は2・59人で前週比1・12人増。やや急なようだ。保健所管内別では札幌の6・75人、室蘭の5・25人が目立つ。学級閉鎖や休校も出てきた。心配なのは、年末にかけ報告数が34人まで一気に上昇した2014年と似た推移をたどっていること。ご記憶の通りここ2年は平穏に過ぎたため、そのつもりで油断していると痛い目に遭いそうだ。気温も寒暖差が激しく体調管理が難しい

 ▼ならば予防接種が大事と病院に問い合わせると、ワクチンが不足気味で待機している人が多いのだとか。どうやら日常生活で気を付けるしかない。人混みは極力避け、帰ったらうがい、手洗いをしっかり。あとは家でのんびりミカンでも食べているとしよう。


大谷選手は米エンゼルスに

2017年12月12日 07時00分

 人が一回り大きく成長するためにできることはいろいろある。環境を変えるのもその一つだろう。堀辰雄は短編『燃ゆる頬』で、少年が高校の寄宿舎に入り、たくましい青年に育っていく姿を描いた

 ▼両親が少年の神経質を直そうとしてそうしたのだ。彼は思う。「環境の変化は、私の性格にいちじるしい影響を与えずにはおかなかった。それによって、私の少年時からの脱皮は、気味悪いまでに促されつつあった」。こちらの青年の場合は両親に決められたのではなく、自分の意志で環境を変えるのだから脱皮後の姿も相当大きなものとなるに違いない。元北海道日本ハムファイターズの大谷翔平選手が、米大リーグ・エンゼルスに移籍した

 ▼現地時間9日、カリフォルニア州の本拠地スタジアムで入団会見を開いたそうだ。テレビでその様子を目にしたが、背番号17の真っ赤なユニホームに袖を通した大谷選手が別な人のように見えた。ファイターズのユニホームでないことに寂しさを覚えた人も多かったろう。気になるのは「二刀流」。エンゼルスでもその流儀は貫くようだ。ベースボールの本場ゆえ、常識外れとの批判にさらされるかもしれない。ただ、気のいいアメリカ人のこと。成功すれば手放しで喜んでくれるのでないか。もっとも、無理はしてほしくないが

 ▼大谷選手が日本の器に収まらなくなることは、皆分かっていた。だからこの5年、本道に元気をくれたことには感謝あるのみ。あとは脱皮して偉大な選手になるのを応援するだけである。世界の「OHTANI」。その活躍を早く見たい。


若者の活躍

2017年12月09日 07時00分

 若者が世界で活躍するのを見ると胸がすく。19歳でバングラデシュに渡り、教育を受けられない子どもたちのために映像教育プロジェクトを始めた税所篤快さんもそんな若者の一人である

 ▼著書『若者が社会を動かすために』(ベスト新書)を楽しく読んだ。現在28歳。若さ故の突破力で他にも多くの挑戦をしているようだ。その過程で気付いたのは、社会を動かすには「人のつながり」が必要ということだったそう。高校の時にイベントで米倉誠一郎一橋大教授に「クレイジーなヤツが世界を変えるんだ」と激励を受け、学生時代にはグラミン銀行創設でノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌス氏に「前へ!前へ!前へ!」と背中を押されたそうだ。尊敬できる人との出会いで人生が変わり、社会を動かす力も得たらしい

 ▼あすは坂本龍馬が京都で非業の死を遂げてからちょうど150年(新暦)。激動の幕末を先頭に立って駆け抜けた龍馬という若者も、信頼できる師と出会えたことで道が開けた人だった。河田小龍や横井小楠に世界と伍していく方法を学び、勝海舟に海防の重要性と公(おおやけ)の精神を教えられた。「日本を今一度せんたくいたし申候」の手紙を姉乙女に送ったのも、師に鍛えられ、日本社会を大きく動かそうとの志を抱いたからである

 ▼今、日本の若者はさめていると評されるが本当だろうか。本来師と呼ばれるべき年齢の人々が過去にばかりこだわり、若者の大胆な挑戦を後押しすることに無関心なのでないか。「人のつながり」が希薄な社会では若者の活躍もおぼつかない。


NHK受信料制度は合憲

2017年12月08日 07時00分

 いざ引っ越しをするとなると、住所変更だ何だといろいろ手続きしなければならないことが出てきて面倒である。来年のことを考え、今からため息をついている人もおられるのではないか

 ▼そこで一つの安心材料として、手間を省けることも中にはあることをこの川柳でお伝えしたい。「引越して最初に来たのNHK」老梅小町(『平成川柳傑作選』毎日新聞出版)。どこから知るのか、あの目ざとさには驚くばかり。受信料の支払い拒否に悩んできたNHKにとっては朗報だろう。今頃胸をなで下ろしているに違いない。テレビなどの放送受信機を持つ人に契約を義務付けるNHK受信料制度が「合憲」のお墨付きを得たのだ。おととい、最高裁大法廷が初めて判断を示した

 ▼国民の知る権利を保障するためには、公平な負担でNHKの放送を支えるのが合理的との理由である。契約拒否者にNHKが裁判を起こし、勝訴が確定した時点で契約が成立、支払い義務は受信機設置時から生じることも併せて指摘した。つまり最高裁はNHKの主張を追認した形。ただ、これで受信料トラブルが減るかといえばどうか。本質はまた別にあろう。うなずく人も多いと思うが幾つか上げると、契約徴収担当者の態度の悪さ、中立性を逸脱した放送内容、もうけ過ぎへの批判―である

 ▼筆者もかなりひどい担当者に当たったことがあるし、偏った報道に眉をひそめたこともある。もちろん全部が全部というつもりはない。むしろ優れた番組に感心することしばしばである。だからこそ、ここでおごらずにと言っておきたい。


史上初の永世七冠

2017年12月07日 07時00分

 インターネット関連の総合サービス企業「グーグル」の名前の由来はグーゴルという数の単位である。1グーゴルは10の100乗。1の後ろに0が100個並ぶ数だが、典型的な銀河に存在する原子の数より多いらしい。もうここまでくると一体何のことやら。想像すらできない

 ▼ところが、将棋で初手から決着がつくまでに出現する可能性のある手順数は、それをはるかに上回る10の220乗なのだとか。いやはや。羽生善治棋聖が作家の小川洋子さんとの対談でこう語っていた。将棋は「人間には難しすぎるゲームで、長くやっているうちに『分からない』ということがよく分かってくるんです。自分が解明できる部分はとても小さい」(『羽生善治 闘う頭脳』文春ムック)

 ▼天才といえども10の220乗の検討まではできない。ただ、その「分からない」に一切ひるむことなく、常に新しい戦術を探求し続けた人である。羽生棋聖が第30期竜王戦を制して永世竜王の称号も得、史上初の永世七冠を達成した。永世の称号は棋聖、王将、棋王、王座、王位、名人、竜王それぞれのタイトルで連続5期制覇などの条件を満たすことでやっと得られる。エベレストをはじめとする世界7大陸の最高峰を、それぞれ単独無酸素で連続5回以上登頂に成功したようなものだろう

 ▼やはり作家の沢木耕太郎氏との対談では「『考える』というより『捉える』ということをしているときが多い」とも語っていた。局面の打開策が全体像として絵で見えるそうだ。ああそれなら10の220乗でも…。いや凡人には無理無理。


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