コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 284

東京都議選告示

2017年06月23日 09時29分

 数々の名作ドラマを生み出した脚本家の向田邦子さんは、同じ脚本家でも男性と女性では場面の作り方が違うと感じていたそうだ。『無名仮名人名簿』(文春文庫)に書いている

 ▼例えば激しい家族げんかのシーン。男性脚本家は物をぶつけたり膳を引っくり返したりと派手に物を壊す展開に仕立てがちだが、女性はパンや雑巾を投げつけるのがせいぜい。理由は、「女は、勿体なくて物がこわせない」からだという。なるほど女性は気に入って買った茶碗など、怒って一度手にしても置き直しそうだ。そこへいくと男性は見境がない。壊してしまった後で悔やむのが常である。ことさら性別の違いを強調するのが適切でないのは分かっているが、やはり小池百合子東京都知事も女性だったということだろう

 ▼築地市場を豊洲に移転する問題で、築地も豊洲も両方残す方針を表明したのである。もったいなくてどちらかを壊すなんてできないと考えたのではないか。東京五輪を見据えてか、まさにウルトラCである。まず豊洲移転を実現し、5年後をめどに、築地を市場機能も備えた「食のテーマパーク」に衣替えするのだとか。選択と集中でなく、あれもこれも。さすが東京。よほど台所には余裕があるとみえる

 ▼東京都議選がきょう告示される。投開票は来月2日だ。豊洲移転には一応のけりをつけ、「都民ファーストの会」の準備も整った。いよいよ小池劇場最大の見せ場である。小池氏は自民党を壊す脚本作りを終えているはず。もったいないなどとは考えてもいないだろう。さて都民の審判やいかに。


解放はされたものの

2017年06月22日 09時13分

 その手記を読んでいると、だんだん胸苦しさがつのってくる。例えばこんな回想があった。「みなお腹をすかしながら街をさまよい、仕事はない。あったとしてもお金はくれない。だから食べ物も買えない」

 ▼北朝鮮から脱出した斉藤博子さん本人が書いた『北朝鮮に嫁いで四十年 ある脱北日本人妻の手記』(草思社)である。斉藤さんは1961年、朝鮮人の夫と共に北朝鮮に渡り、01年に脱北に成功し帰国した。かつて北朝鮮が「地上の楽園」と呼ばれていた時期があった。北朝鮮でなく日本国内でである。当時、政府もマスコミも、豊かで平等な国に戻って暮らせばいいと在日朝鮮人らの帰国事業に力を入れていたのだ。日本人の妻も一緒にである。斉藤さんもその一人だった

 ▼ただ、待っていたのは楽園でなく地獄。飢えをしのごうとヤミ商売に手を出した娘が3年の労役刑を受けたこともあったらしい。娘は帰ってくると、刑務所の中では毎日のように、たくさん人が死んでいたと教えてくれたそうだ。罪人の扱いが極めて残酷な証拠だろう。観光中に拘束され国家転覆陰謀罪とされた米大学生が意識不明のまま解放され、19日に亡くなった。脳がほぼ壊されていたという。相も変わらぬ非人道性と不誠実さには憤りを感じる

 ▼国民は学生が罪人と信じ込まされているのだろう。斉藤さんは、朝鮮人は「金正日は世界一だと思っています」と記していた。正恩氏も世論をそう誘導しているに違いない。ただ、今では多くの国民がその世界とは地獄だと気付いているだろう。いつまで偽りが通用するか。


航空機での北方墓参

2017年06月21日 09時29分

 きょうは1年で最も日の長い夏至である。札幌で日の出が午前3時55分、入りが午後7時18分、根室は少し日の出が早く午前3時37分、入りが午後7時2分だという

 ▼毎年思うことだが、仕事が終わってもまだ外が明るいと、時間を余計もらっているようで不思議と豊かな気持ちになる。同じ思いの人も案外多いのでないか。欧州では夏至のころに妖精が騒ぎ出すとの言い伝えもあるそうだ。心が妙に騒ぐからだろう。日本は縦に長い列島ゆえ、夏至とはいえ本道ではやっと夏の入り口に差し掛かったところ。日の長さとともに新緑の爽やかさを楽しめるのは本道ならではのぜいたくである。ところが残念ながら夏の名物は爽やかさばかりではない。釧路根室地方の海霧もそうである

 ▼今回はその霧が行く手に立ちはだかった。航空機による初の北方領土墓参が濃霧のため延期を余儀なくされたのである。元島民らは18、19の両日、霧が晴れるのを願いながら待ち続けたものの、とうとう天候回復はかなわなかった。本道の太平洋側は夏に高気圧から暖かく湿った空気が流れ込むため海霧が発生しやすい。特に6月から8月にかけては月の半分が霧である。筆者も釧路勤務のころ、この時期の霧には随分悩まされた

 ▼関係者も分かっていたろうに他に日程は組めなかったのか。例えば秋以降なら晴天も続く。元島民の皆さんはまさに一跳びで故郷の土を踏めると期待していたに違いない。さぞ無念だろう。根室の夜明けが早くても霧が明けねば航空機は飛べぬ。妖精がいれば霧を吹き飛ばしてもらいたかった。


内閣支持率激減

2017年06月20日 09時35分

 夏の暑さはこれからが本番だというのに、安倍政権には早くも冷たい秋風が吹き始めているようだ。いや自然の風でなく世間の風のこと

 ▼共同通信社と読売新聞社がきのう、週末に実施した世論調査の結果を発表したのだが、どちらも内閣支持率が大幅に下落しているのである。共同が前回5月調査比10.5ポイント減の44.9%、読売もやはり12ポイント減の49%というから、内閣をいささか揺さぶるくらいには強い風でないか。改正組織犯罪処罰法成立のため荒業を使ったり、加計学園問題の再調査で焦点となっている文書の実物が見つかったりと、先週は内閣の評価を下げる出来事が相次いだ。石破茂前地方創生相の言を借りれば、国民は「内閣って感じ悪いよね」との印象を持ったのだろう

 ▼読売はさらに内閣を支持できない理由についても尋ねている。最も多かったのは「首相が信頼できないから」で、48%に上ったそうだ。今回ばかりはさすがの安倍首相も「読売新聞を熟読していただきたい」とは言いにくかろう。倒産寸前の会社を立て直した近藤宣之日本レーザー社長は著書『ありえないレベルで人を大切にしたら23年間連続黒字になった仕組み』(ダイヤモンド社)で、特に留意すべき経営危機の兆候は、社長が「不振の原因を外部環境のせいにする」ことだと指摘していた

 ▼政治不信もまた同じではないか。安倍首相はこのところ自らの「正しさ」に固執するあまり、うまくいかない理由を外部に求めてばかりいた。おごれる者は久しからず。世間の冷たい風で首相は熱くなった頭を少し冷やすといい。


薬との付き合い方

2017年06月17日 09時10分

 幸いにして薬に縁のない生活をしていたのだが、最近、急性前立腺炎を患い、そういうわけにいかなくなった。この病気は前立腺が腫れて小便が出づらくなる。朝から尾ろうな話で申し訳ない

 ▼その上、高熱と全身の痛みに苦しめられるのだから難儀なことである。経験した人はよくお分かりだろう。たまらず病院に駆け込み、幾種類かの薬を処方してもらった。毎食後飲むようにとのこと。もう薬だけが頼りである。ところがこの中の鎮痛剤、病状が悪すぎるためか、なかなか効いてくれない。さあ、こうなると普段薬に縁のない人間は考えるのである。「効かないってことは量を増やしてもいいのでは」「時間を空けず飲んでも構わないかも」などなど

 ▼お笑いコンビ「インパルス」の堤下敦さんが先日、睡眠薬を飲んだ後に車を運転し、意識がもうろうとした状態で警察に見つかったという。この報を聞き、わが身を振り返り少々同情してしまった。人は切羽詰まると往々にしてまともな判断ができなくなる。ただ、重大な交通事故の危険もあったわけだから、軽率とのそしりは免れまい。堤下さんは近頃、じんましんによるかゆみでよく眠れなかったらしい。やはり切羽詰まっていたのだろう

 ▼もう一つ大きな失敗は、インターネットの「効くまでに時間がかかる」との情報を信じてしまったことである。まあ気持ちは理解できるが。いつ大病に見舞われるか分からない。ストレスの多い世の中でもある。一方でネット上には間違った情報もあふれんばかり。難儀なのは病気だけでなくこちらもである。


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