つい最近、心温まるニュースに触れた。埼玉新聞のWeb版で読んだのだが、同県行田市の女子高生が通学路に散乱していた大量の紙を一人で拾い集めたというのである
▼一度は通り過ぎたものの、「見て見ぬふりをして通り過ぎる自分を受け入れられず」戻ってきたそうだ。わざわざコンビニでごみ袋を買い、交通量の激しい道で車の切れ目を見つけながら懸命に回収を続けたという。なかなかできることではない。終わってみれば紙はごみ袋3袋、合計10㌔に達していたという。駆け付けた鴻巣署員が到着すると、安心したのか彼女の目から涙が落ちたそうだ。危険な場所にその量である。自分で始めたこととはいえ、大変な思いだったに違いない
▼見て見ぬふりをして通り過ぎないといえば、今時期の本道でよく繰り広げられる、雪で埋まった車の救助もそうだ。この女子高生ほどの勇気は必要としないが、当たり前の文化として助け合いが根付いている。つまりあすはわが身、お互いさまということだろう。安倍首相がおととい、昨年末大規模火災に遭った糸魚川市を訪れた。地域復興のため積極的にかかわる考えを表明したという。国として見て見ぬふりをすることはないとの宣言といえる
▼規模が大きいとはいえ、首相が自然災害でもない火災の対応に乗り出すのは珍しい。いずれにせよこの報を聞いてほっとしたのは現地の人ばかりでなかったろう。あすはわが身なのである。「見て見ぬふりはできない」。この国にそんな言葉が当たり前にあることの価値を、今更ながらかみしめている。