コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 308

創作四字熟語

2016年12月22日 10時00分

 どの国の人も言葉遊びが大好きである。その種類はしり取りやなぞなぞ、回文からアナグラム(組み替え遊び)、クロスワードパズルまでいろいろ

 ▼とりわけ日本人はこの言葉遊びに目がないようだ。日本語は平仮名と片仮名、漢字のほか英語など外来語も常用し、それら全てを組み合わせて使えるため言葉を際限なく応用変化させられるためだろう。書店に行けば大抵その手の本や雑誌が大きな顔で座を占めている。これもそんな言葉遊びの一つ。ことしも、住友生命の「創作四字熟語」が発表になった。2016年の世相を四字熟語の形式で表現するものである

 ▼優秀作品を見ていこう。まず「銀勇四人」(吟遊詩人)と「羽願優勝」(破顔一笑)。日本に多くのメダルと熱い心をもたらしてくれたリオ五輪はやはり印象深い。「風震火山」(風林火山)は熊本地震はじめ相次いで日本を襲った自然災害を表したものだ。「GO夢中」(五里霧中)に「英欧分離」(兵農分離)と。そうそうそんな話題もあった。ところで、ことしの北海道はどう表現できるだろう。当方も便乗して考えてみた。住友生命の優秀作品には及ばないが、ご笑覧願えれば幸いである

 ▼最初に散々なことから。「台風三過」(台風一過)。一夏に3度の上陸にはまいった。うれしかったこともある。「新幹成就」(心願成就)。同じ上陸でも北海道新幹線開業は感激の一言だった。そして「優勝乾杯」(優勝劣敗)。日ハムは日本一、コンサドーレはJ2優勝でJ1昇格を果たした。さて、来年はどんな四字熟語が生まれるか。


冬至

2016年12月21日 10時00分

 最近は随分と日が短くなりましたね―。この時期、そんなあいさつを交わすことも多いだろう。毎日、仕事を一段落させふと気が付くと、早くも夕暮れの気配が色濃く漂っている。知らぬ間に大事なものをなくしてしまったような、奇妙な喪失感が不意に胸を突く

 ▼作家梶井基次郎もそうだったらしい。『冬の蠅』にこんな描写があった。「私は毎日自分の窓の風景から消えてゆく日影に限りない愛惜を持っていた」。主人公の男が冬至のころ抱いた感慨だという。ことしはきょうがその冬至である。男はすぐ後に「日の当たった風景の象徴する幸福な感情」とも述べているから、早すぎる夜の訪れは歓迎していなかったようだ

 ▼もっとも、世の中はそんな人ばかりでなく、夜が待ち遠しい人もいる。年末まで残り10日、ということは忘年会真っ盛り。日が暮れていくのをうれしそうに眺めている人がもしいたら、十中八九その手合いである。ちなみに日の入りは札幌で午後4時3分。程なく夜だ。しばし待たれよ。「寛ぎをたつぷり貰う柚子湯かな」芝あきを。忘年会がなければ、ゆっくりゆず湯につかりたい。さわやかなゆずの香気で、一年の疲れも抜ける。長い夜も工夫次第で幸福度はぐっと増すのだ

 ▼ことしは女性社員を昼夜別なく働かせ、自殺に追いやった電通のことが話題になった。かの会社でも当然忘年会は開かれていよう。楽しいか楽しくないかは別として。ただ、のんびりとゆず湯で緊張をほぐせている社員はどれだけいるだろう。消えゆく光に愛惜を感じる余裕はできただろうか。


休眠預金活用法

2016年12月20日 10時00分

 先日、道立文書館が道庁赤れんが庁舎で開いていた「百年写真―明治の青年、柳田一郎が撮りためた『日常』」を見てきた

 ▼根室の裕福な家に生まれた青年が、当時まだ珍しかったガラス乾板の小型カメラで写した、遊学先の東京や故郷の風景を集めた写真展である。街並みや行事、人々、いろいろな「日常」が切り取られていた。意外だったのは、青年たちが旅行のほか海水浴やサイクリングにも興じていたことだ。明治の青年は武骨で、遊びになど見向きもせず学問に打ち込んでいるものだと勝手に思い込んでいた。よく考えてみればそんなはずはない。今も昔もこの年頃は遊びたい盛りではないか

 ▼もっとも柳田青年は裕福だから、普通の若者と暮らしぶりは同じであるまい。ただ、心の中まで違ってはいなかったろう。違ったのは家に不自由なく学べる財力があったこと。一方で、学びたいのに、お金がないためあきらめざるを得ない青年は昔も数多くいた。彼らをどう助けるか。今も変わらぬ課題である。それを解決に導く手立ての一つとなる法律が最近成立した。「休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」がそれである。金融機関の口座で10年以上、預金も引き出しもないまま忘れ去られたお金を、子どもの貧困対策や若者の支援に回そうというのだ。毎年500億円以上が活用できるという

 ▼金融機関の奥で眠りこけているお金を目覚めさせ、世のため人のために働いてもらおうというのだから名案ではないか。これで困窮する子どもや若者が、人並みの「日常」を取り戻せればいい。


日露首脳会談

2016年12月17日 09時50分

 100歳の誕生日会を開かれるのが嫌で、老人ホームから逃げ出した主人公アランの痛快な冒険を描いたコメディ小説がある。『窓から逃げた100歳老人』(ヨナス・ヨナソン、西村書店)がそれ

 ▼こんな会話が印象に残っている。一緒に旅をしているヘルベルトが「計画通りにいかない気がするな」と不安げにつぶやくと、アランが自信満々に励ますのだ。「いいかい、物事はなるようになる。それがふつうだ」。ボールから手を離せば落ちる、というのと同様、当たり前のことを言っているにすぎない。それが人生経験豊かな100歳の老人の口から出ると、究極の真理を聞いている気になるから不思議である

 ▼さて、そこまでの高齢ならぬ安倍首相の今の胸の内にあるものは、ヘルベルトの不安か、それともアランの達観か。また期待を抱いて見ていた北方四島の元島民の皆さんはどう感じたろう。山口、そして東京ときのうまで2日間にわたって行われたロシアのプーチン大統領との首脳会談が終わった。会談終了後に開かれた共同記者会見は印象的だった。安倍首相とプーチン大統領が交互に会談の成果を発表したのだが、安倍首相がその冒頭から大部分を北方領土問題に費やしたのに対し、プーチン大統領は最後に少し触れただけだったのである。その問題で合意できたのは、特別な制度の下での共同経済活動を公約した点のみ

 ▼どうも生煮えの魚を食べさせられた感が否めない。うまく飲み込めるだろうか。いずれにせよ一道民としては、「なるようになる」以上のことをぜひ望みたい。


JR石勝線・根室線復旧

2016年12月16日 10時00分

 作家田村喜子が史実を基に本道鉄道建設の歴史を描いた『北海道浪漫鉄道』(新潮社)に、水害による鉄路寸断の怖さを記したこんな一節がある

 ▼「交通途絶は、米価の高騰を招き、食糧不足を来たし、上川地方に深刻な影響を与えていた。畑作には病虫害が発生し、一時に家も田畑も失った住民のなかには、乞食に身を落とすものもあり、犯罪は激増した」。旭川の住民は、日々おびえて暮らすしかなかったという。もちろん最近の話ではない。旭川と空知太を結ぶ上川線が開業した1898(明治31)年8月21日から間もない、9月7日の大雨がもたらした災厄だったという。盛り土が流され線路はずたずた。軌道は倒れた巨木でふさがれ、橋梁は全て流失したそうだ

 ▼かろうじて代替交通路がある現代では、昔の旭川の人ほど困窮はしなかったろうが、それでも相当な不便はあったに違いない。利用者らは今、ほっとしているだろう。夏の台風で寸断されていた石勝線・根室線の復旧にめどがついたのである。JR北海道の発表によると、運休していた特急「スーパーおおぞら」なども22日には再開させるという。このところ暗い話題ばかり目立った同社で、久々に聞く明るいニュースである

 ▼それにしても復旧の速さには驚かされた。転用できる橋桁があったのも幸運だったが、やはり運行正常化に懸ける鉄道マンの熱意と技術力のたまものだろう。田村さんが小説で伝えたかったのもそのことだった。「原野を拓き山岳を穿ち、橋梁を架けて鉄道を建設するのがシビルエンジニアなのだ」と。


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