日本人が麺類大好き民族であることに異論を差し挟む人はいないだろう。ラーメンからそば、うどん、そうめん、スパゲティまでこれほど多くの種類の麺をいつでも気軽に食べられる国は他にない
▼作家でエッセイストの椎名誠さんは、『麺と日本人』(角川文庫)でその理由の一つをこう考察していた。「その食べ方と食べる習慣、食べる技術によるものが大きいと思う」。要は〝すする〟という動作のことである。欧米人はすする動作ができず、その上、無作法で下品な行為と考えているそうだ。気の毒な話でないか。やはりずるずると勢いよくすすり上げてこそうまいのである。麺類に関してはもう一つ、それぞれに温と冷があるのも日本の食文化の豊かさを証明していよう
▼「冷やし中華はじめました」(AMEMIYA)というコミックソングもあったが、最近はラーメンをはじめそばやそうめんも冷たい方を食べる機会がめっきり増えた。体とは何と正直なものか。気づけば本道もすっかり真夏である。各地の気温が30度を超える日も少なくない。札幌管区気象台が発表した17日からの1カ月予報によると、全般に気温は平年より高めに推移するそうだ。特に30日までは晴れる日も多く、厳しい暑さが続くらしい
▼朝晩も気温が下がらないため寝不足で体力が落ち、熱中症に陥る心配もある。まずはしっかり食べることを心掛けたい。「冷麦の窪む氷を置きにけり」今瀬剛一。冷たい麺を冷たい汁につけてずずっと。栄養の付く副菜も添えて。暑さにやられてもこれなら喉を通る。日本人で良かった。