空知を語る 24首長

空知を語る 24首長(24)夕張市 鈴木 直道市長

2017年09月14日 17時48分

夕張市 鈴木 直道市長リスタート掲げ、「今より未来」

 全国で唯一の財政再建団体となった夕張市。ことし3月、国から財政再生計画の見直しの了承を受け、財政破綻から10年でようやく前向きな施策を打ち出せるようになるなど、〝リスタート〟を掲げた挑戦が始まっている。

 ―まちの特徴は。

 763平方㌔という広大な面積の中に24の炭鉱を持つ石炭のまちで、国内最大の炭都だった。坑口ごとに集落があり分散した都市形態だったため、エネルギー施策の転換で全国一の人口減少に転じると、まち自体が非常に非効率な状態に陥り、2006年には財政破綻。全国で唯一の財政再建団体となった。

 ―まちの課題は。

 お金を返していく「財政再建」と、夕張を持続させる「地域の再生」の両立が課題。これまでの10年は財政再建だけを考えて取り組んだが、その間に人口は3割減り、緊縮財政で地域は疲弊した。財政再建と地域再生はいわばアクセルとブレーキの関係。両立は難しいが、それが求められている。

 ―解決に向けた対策は何か。

 財政再生計画を見直し、実質的には再生団体ではなくなったが、計画はあくまで計画。止まっていた時計の針を力強く動かしていく必要がある。新たな計画ではこれまで実施してこなかった定住対策を打ち出した。保育料の見直しなど子育て世帯に特化した施策や、夕張高校の魅力化にも取り組んでいる。夕張では5人以上集まれば私が出向き、施策の説明をしているが、市民は誰でも市の施策を話せると思う。施策について市民一人一人が考えることが大事だ。

 ―今後のまちづくりは。

 このまちに住み続けた人が、あと10年後に財政再生団体を脱却した後、「夕張に残って良かった」という人が過半数になることが目標。そのためには生活の質が上がり、幸福を感じられるようになることが必要だ。市民全員でまちづくりに取り組めば、みんなが憧れるまちになる。いま住んでいる9000人がどこまで力を出せるかにかかっている。

 財政破綻で得た教訓は大きい。子どもたちが自信を持って「夕張」と言えるよう、どん底からでもはい上がる努力を伝えるのも役割。誇りの回復には時間がかかるかもしれないが、お金はなくても協力していくことが自治の原点。「今より未来」、夕張は必ずいい方向に行くと思う。 (おわり)

 鈴木 直道(すずき・なおみち)埼玉県出身、1981年3月14日生まれ。2011年に初当選し、現在2期目。2017年9月15日掲載

(この連載は空知支社の惣田圭一、塩原歩、瀬端のぞみが担当しました)


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