おとなの養生訓

おとなの養生訓 第41回「お燗と冷や酒」 上燗でゆっくり楽しむ

2014年03月14日 15時55分

 昔から、清酒はお燗を付けて飲むのが普通でした。古典落語には「冷や酒は体の毒」というフレーズが出てきて、ほとんどの場面で燗をつけてお酒を楽しんでいる様子が描かれています。確かに冷や酒は体に悪いようで、酔いが急に回りやすく、さらに量が過ぎると翌朝に残りやすい様です。お燗ではそういう目に合うことが少ないという訳です。

 冷や酒というのは、今はやりの冷蔵庫に保存してのむ冷酒(れいしゅ)のことではなく、単に室温においた清酒のことです。これをお湯で温めて燗をつけるのですが、昔から「上燗」といって45度から50度ぐらいにするのがよいとされています。もっと熱くすると熱燗という訳ですが、お酒がおいしくなくなると、敬遠されます。冷や酒はからだに悪く、熱燗はおいしくないから、上燗にするのです。実は、これには科学的な裏付けがあるのです。

 清酒を代表とする日本酒には、主成分であるエチルアルコールのほかに、アセトアルデヒドといった、揮発性の成分が僅かながら含まれています。これらの成分が日本酒の香りや味わいに一役買っていることは間違いないのですが、これらが、体の中に入ると、色々悪さをすることが分かっています。

 とくにアセトアルデヒドは、体内でエチルアルコールが分解される際に生じますが、日本酒には製造過程から含まれていることが証明されています。アセトアルデヒドは量が増えると、血管を開いて顔を赤くして、頭痛やむかつきの原因になります。また、二日酔いの原因でもあります。アセトアルデヒドの沸点は20度ぐらいです。

 一方、エチルアルコールの沸点は78度ぐらいです。つまり、上燗にすると、体に悪いアセトアルデヒドは蒸発して飛んでしまうのですが、主成分であるエチルアルコールは残るので、軽い味わいになり、体に負担がかからないという訳なのです。

 熱燗では肝心のエチルアルコールが、少しずつですが抜けてしまうので、味わいがなくなるという訳です。「ぬるくもなく、熱くもなく、いい頃合いの上燗…」というフレーズが「上燗屋」という上方落語の演目に出てきます。本当に、いい頃合いなんですね。

 流行りの冷酒もいいですが、上燗でゆっくりというのがおとなの養生訓です。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


おとなの養生訓 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

e-kensinプラス入会のご案内
  • 古垣建設
  • 川崎建設
  • オノデラ

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,390)
函館―青森間、車で2時間半 津軽海峡トンネル構想
2021年01月13日 (1,262)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,228)
アルファコート、北見駅前にホテル新築 「JRイン」...
2024年04月16日 (1,117)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (835)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。