肥満は現代人を悩ませる問題の一つです。肥満の程度を示す指標としてBMI(体格指数)が使われます。これは、体重(kg)を身長(m)で2回割ることで算出されます。
BMIが22なら標準体格ということになり、25以上を肥満、30以上を高度肥満と分類します。厚生労働省の調査によれば、日本人の約3割の人は25以上であることが分かっていて、今後も増える傾向があります。
体重が増える原因は、ご存じのように体に脂肪が増えることです。それならば、脂肪がたくさん含まれている食べ物を食べなければ、脂肪はつかないのでしょうか?脂肪がたくさん含まれているのは、肉類、魚卵、青魚、バターなどの乳製品、揚げ物、ナッツ類などです。
しかし、これらの食べ物を控えても、体重が減らないと悩んでいる人も多いものです。脂肪を控えても、糖分を含み、脂肪がほとんど含まれないお米、小麦粉、お蕎麦などをたくさん食べると、やっぱり体に脂肪がつくからです。
人の体では、食べ物が持つエネルギーを利用して細胞で代謝を行い、生命を維持しています。これに必要なエネルギー量を所要エネルギー量といいます。食べ物として摂取されるエネルギー量と所要エネルギー量が同じなら、体には変化は起こりません。
しかし、摂取されるエネルギー量が所要エネルギー量を超えると、余ったエネルギーは糖分であっても、タンパク質であっても、すべて脂肪として蓄えられます。
なぜなら、脂肪はもともと水に浮かぶくらい軽いもので、同じエネルギーを物質として貯蔵するには糖質などより脂肪の方が有利なのです。そこで、ご飯を食べても、うどんを食べても、余った分は脂肪になるのです。
でも、どんなに有利であっても、脂肪がたくさんたまると、結局体重が増えます。この場合、一番先に脂肪がたまるのがおなか周りです。BMIが正常範囲の人で、おなかがポッコリしてきたら要注意というわけです。
体重を減らす決め手は、食べ物に含まれる総エネルギー量を、つまり「カロリー」を減らすことです。なので、脂肪の多い食品を極端に減らす必要はありません。脂肪の多い食品だけ減らそうとすると、食事が単調になり、早々に嫌気がさして、減量に失敗することになるからです。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)