最近、居酒屋などのメニューを見ると、ハイボールとそれをアレンジしたドリンクの名前が、上位に並んでいることが多くなりました。昔、全盛を誇った酎ハイは、影が薄くなっています。宴会のスタートは相変わらずビールや発泡酒が主流ですが、すぐに切り替えて、ハイボールに移る人が多くなっているとも聞きました。ハイボール全盛時代です。
ご存じのように、ハイボールはウイスキーを炭酸水で割った飲み物です。ウイスキー1に対して炭酸水を3ないし4の割合で混ぜるのが一般的です。数年前から、ウイスキーメーカーの強力なキャンペーンが大きく影響しているのは間違いありませんが、ハイボール自体、手軽に飲める飲みやすいお酒として、受け入れられていることが、ポイントです。
ウイスキーは香りがきつく、アルコールが濃いので、敬遠している人も多いのですが、ハイボールでは、ウイスキーの不利な性質をそれこそ薄めて、一方で、ウイスキーの香りの良いところはしっかり残っているのです。ここが、水割りとの決定的な違いです。
水割りは、かなり上手に作らないと、どうしても水っぽさが消えないからです。これこそ、炭酸の効果なのでしょう。炭酸には発泡することで、ウイスキーの香りを引き立てる作用があります。また、炭酸の泡は、舌を適度に刺激するので、薄めた飲み物、という印象をかなり弱めることができるのです。
ハイボールは、アメリカが発祥のカクテルです。なので、初期に使ったウイスキーは、アメリカ産のバーボンであったと思われます。今は、一般的なスコッチタイプのブレンドウイスキーが使われていますが、ウイスキーの種類、ブランドはたくさんあるのですから、いろいろ試してみるのも、楽しいものです。
高級ウイスキーをハイボールにするのはもったいないと思われるかもしれませんが、決して台無しにはしません。私は、スコッチウイスキーのシングルモルトのハイボールがお気に入りです。それも、香りやアルコールの強いものをハイボールにすると、また違った味わいが出てきて、素晴らしいのです。
ウイスキーは蒸留酒なので、酔いざめが早く、楽なことは言うまでもありません。それに加えて、アルコール量をワインや日本酒程度に抑えられるので、じっくりと長く楽しめます。流行るのは道理とも言えますね。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)