再生に導く 計画を提案
札幌市内で築40年を迎える分譲マンションが増加傾向にある。大規模修繕するケースが多い中、建て替えにも目が向き、市への相談が増えている。北海道まちづくり協議会の常務理事で、マンション建て替え支援研究会の座長も務める武井秀爾氏に再生事業の現状を聞いた。
―研究会での取り組みは。
マンション建て替え円滑法が制定された2002年から活動している。権利変換により事業を進める市街地再開発をコーディネートしてきた経験を生かし、マンション管理組合や建設業者などを対象としたセミナーを開いた。建て替えに必要となる合意形成の仕方や手続きを進める上で注意する点を伝えた。初めの頃は再建の話題が中心だったが、セミナーを開くにつれて参加者が減ったこともあり、耐震化や融資制度の話を交えながらの内容に変わった。まだマンション建て替えの熱は高まっていないと感じている。
―分譲マンションの建て替えが進まないのは。
建て替えの相談で、自分が住む分譲マンションの容積が余っているから保留床をたくさんもらえるのではないかとよく聞かれるが、そうではない。近年は工事費が高くなっていることから、保留床があっても売却金だけでは賄いきれず、建て替えの負担金が出る傾向にある。相談に来る人のほとんどは高齢者のため、借金までして再建するのかという話になると、どうしてもつまずくという難しい現状がある。
―今後、マンション再生事業は広まるか。
築40年を迎える老朽化マンションが増加傾向にある中で、地震をはじめとする自然災害が多いため、自分が住むマンションは将来どうなるのかという風潮になっている。最近は札幌市に建て替えを相談する事例が増え、市としても対策に本腰を入れているようだ。
さらに、人気のある駅近くのマンション開発用地が少なくなってきたことで、デベロッパーが全戸買い取りで再建する動きも出てきた。エリア限定になるが、見込みはあると思っている。建て替え法だけでなく、補助金がある制度なども絡めれば、やり方次第で物事は進めやすくなる。
―研究会としてどのような取り組みを進めるか。
郊外にある1970、80年代に建設された団地型の分譲マンションの今後を危惧している。区分所有者が多く、土地評価は札幌都心部ほど高くないため、デベロッパーは付きづらいのではないか。何も対策をしなければ将来、スラム化する恐れがある。
研究会としては郊外マンション群の再生を中心に支援したい。例えば、建て替え法による敷地売却制度を活用し、高齢者用施設や病院に敷地を半分売って、その資金を使ってマンション建て替えをするなどのスキームを提案できればいい。法律に沿って進めるのはハードルが高いが、その分メリットは多い。うまく使うことが大事だ。
(聞き手・武山 勝宣)
武井秀爾(たけい・しゅうじ)1970年7月生まれ、札幌市出身。94年北海学園大工学部卒。2016年に北海道まちづくり協議会の常務理事に就任。
(北海道建設新聞2021年6月4日付2面より)