深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り SQUEEZE 舘林真一社長

2023年04月03日 12時00分

舘林真一社長

省人化システムで高収益

 ホテル企画・運営や省人化・効率化に向けたオペレーションシステムなどを提供するSQUEEZE(本社・東京、スクイーズ)。同社が開発したシステムは、JR東日本が初めて整備する無人ホテルに活用されるなど広がりを見せている。北海道日本ハムファイターズの新球場エスコンフィールドHOKKAIDOの目玉施設である「タワー11(イレブン)」のホテル運営も担う。舘林真一社長(33)に事業や今後の展望を聞いた。

 ―球場内のホテルはどのような運営を。

 タワー11のホテルは、企画の段階から運営手法や事業企画の組み立て、システム面のサポートを担当してきた。客室数は12室と小規模だが、天然温泉・サウナを併設していることから、マルチタスクやテクノロジーを活用しながらの効率化・省人化も求められる。高収益を実現するためにシステムを最大限活用し、効率化を推進する。

 アジア初のフィールドが一望できる唯一無二のロケーションを大切に、試合のない日であれば宿泊料金が1室7万―8万円ほどの日もある。5人で宿泊すれば、球場を一望できる部屋での宿泊とサウナ・温泉付きで1人1万5000円ほどと手頃な価格設定になっている。

 エンターテインメントを起点にしたライフスタイルホテルで、全12室の客室は全てコンセプトが異なる。温泉・サウナを含めた団体貸切プランも有効とみている。

 ―提供するシステムについて。

 当社が開発した「suitebook」(スイートブック)は、フロント業務を省人化する。複数棟を同時に管理できるほか、宿泊者のスマートフォンを部屋の鍵として活用するモバイルチェックイン機能などを実装していて、リモートでの運営管理が可能だ。

 接客はフロントにタブレットを置き、カンボジアに常駐するスタッフや海外の在宅ワーカーなどを活用して24時間多言語で対応する。国内に限定すると夜勤の人材が集まりづらいが、国内の夜が日中である欧米の人材ならば働きやすい。人材確保の面でもメリットがある。

 ―省人化システムはどう活用されているのか。

 交通系ICカード「Suica(スイカ)」で、チェックイン・アウトが可能なJR東日本初の無人ホテルにスイートブックが活用されている。1月15日に1棟目となる施設が福島県いわき市でオープンし、今後、東京都の赤羽や田端でも開業する予定だ。

 人手不足の時代になり、当社のシステムには多くのデベロッパーなどから引き合いがある。

 ―自社でのホテル企画・運営について。

 アパートメントホテルのほか、ディスコを改修し、大きなシアタースクリーンでイベントを開催しながら宿泊できるカプセルホテルなど全国で24カ所のホテル開発を手掛けている。

 当社のホテルはインバウンド需要が中心だったが、コロナ禍の中で新たなニーズも見えてきた。働く場所を問わない社会人やカップルのお試し同居など長期滞在需要がある。さまざまな用途に使えるホテルを展開できればと考える。

 また、当社が企画するホテルは省人化・効率化システムにより、従業員スペースを最小限確保しつつ容積率によっては90m²ほどの狭い土地での建設も可能だ。土地所有者の要望にも柔軟に応えたい。

 最近はインバウンドも戻ってきて、2019年以上の予約の勢いがある。道内に目を向けると、北広島市のボールパークや千歳市での半導体工場新築など札幌圏全体で宿泊需要が増大するだろう。自治体や観光団体らと連携し、ホテルを通じてまちづくりや交流人口増などに寄与したい。

(聞き手・宮崎嵩大)

 舘林真一(たてばやし・しんいち)1989年生まれ。東海大政治経済学部卒業後、ゴールドマンサックス証券シンガポール支社での勤務などを経て2014年9月にSQUEEZEを創業した。

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