法改正、概略だけでも把握を
お客さまからよく相談を受ける内容の中で、回答に苦慮するものの一つに相続に関するものがあります。それは、山の中の土地に関するものです。いわゆる原野商法などで取得した、どこにあるのかよく分からない土地について、次の世代に残したくないが何ができるかという相談です。
自治体に寄付できないかと聞かれますが、残念ながら山の中の土地をもらってくれる自治体はなかなかありません。従って、簡単に手放すこともできません。
私の回答は、「新幹線が通ることを願いましょう」とか「高速道路が通る場所だといいですね」というものでした。北海道新幹線や高速道路が所有している土地を通過してくれたら、山の中の何にも使えない土地がお金に化けます。それ以外の希望を見いだすことは難しいです。
手放すことができないのであれば相続せざるを得ません。山の中の使い道のない土地を相続した場合であっても、その相続について登記が必要となります。遺言書のない場合、相続による不動産の移転の登記には、お亡くなりになった方の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍と、相続人全員の現在戸籍が必要となります。一世代のみであればそれほど大変ではありませんが、複数の世代間にわたる相続となると集める戸籍の量も多くなります。ご自分の使う不動産であれば、どんな状態でも登記をするかもしれませんが、山の中の土地についてはどうしても放っておかれがちです。
少しの間、登記を放置してしまったために、関係者が見る見るうちに増え、戸籍をそろえることができなくなってしまったという話も聞いたことがあります。そうなると駅前の一等地であっても、誰も使えない土地となってしまうこともあるのです。
このような問題点を解決するため、大きく2点の法改正がなされました。1点目は4月以降、相続によって土地を取得した人は、土地を手放して国庫に帰属させることができるようになることです。これで、今後も訪れることのない土地を持っておく不都合から解放されそうです。
しかし、実は境界が明らかではなかったり、管理や売却が難しい土地は対象外です。それに加えて、土地を手放すためには、管理費用として負担金を支払う必要があります。まだまだ使いやすい制度となるためには時間がかかりそうです。
2点目は2024年4月以降、不動産の相続登記が義務化されます。相続で不動産を取得した場合は、3年以内に登記をしなければならなくなります。これにより持ち主が分からなくなってしまうことを防ぐのです。
制度は少しずつ変わります。ご自分が使いたい時には、内容が変わっていることもあります。いざ当事者となった場合にすぐに対応できるように、概略だけでも制度を知っておくことをお勧めいたします。