多様性が職場に変革生む
会社員を辞めようと転職活動をしていた頃、何社か面接を受けました。その際、ご担当の方から、私の経歴について一貫性がないと指摘を受けました。「大学で日本史を、大学院で法律を、そしてそのまま法律の仕事をしたと思えば、違う職種で働きたい。飽きたら、弊社も辞めるのではないか」とのことでした。私にとっては、それぞれ理由もありました。以前の経歴を踏まえたステップアップと考えていたことが、飽きっぽいと捉えられた衝撃を克服できないまま、その面接では不採用となりました。
AIの導入により、およそ半数の仕事が20年以内になくなるといわれている この社会において、学生時代に一生の仕事を決め、その仕事、その職種で、いわゆる定年まで働くというモデルは、リスクが高いものです。
変化に富んだ時代に対応できる能力を身に付けるためにリスキリングやリカレント教育が注目されています。いずれも社会人に対する「学び直し」の機会の提供です。リスキリングが企業の場において企業側が戦略的に学ぶ機会を提供するものである一方、リカレント教育は、自ら主体的に、企業から離れて、教育機関で学ぶことを言います。
職場内に多様性が少ないと、異なる意見に対する職場内の受容性が低下するため、発言や行動が鈍化します。そうすると、新しい取り組みに対しても積極性が限られ変革は生じづらくなります。ますます同質性が高まります。
多様性があれば、このような悪循環を防ぐことができます。意思決定に際し幅広い視点を取り入れることができ、個人においては発想力の伸長が、全体においては業務の質の向上が見られるといわれています。
多様性を取り入れるにはさまざまな方法がありますが、リスキリングやリカレント教育により、職場内の意識改革を行うことは有効です。
同時に、中途採用者に対しても、過去の職場で身に付けたスキルを即戦力として生かすのみではなく、異業種、異職種からの採用を行えば、職場内に多様性が生じます。
従業員定着率が高く、年功序列型の日本型雇用慣行の強い企業の方が、雇用の流動性を高め、中途採用を多く活用することにより、利益率や労働生産性が上昇することが分かっています。
自分が所属する集団(内集団)のメンバーの方が、それ以外の集団(外集団)のメンバーに比べて優れていると認知し、優遇する現象を内集団バイアスと言います。
バイアスはその存在を認識することにより、自分の考え方の傾向を知り、取り外して考えることができるようになります。異質なものが目の前に来たら、バイアスにより排除するのではなく、その本質を見て採否を決する力が利益につながるようです。