セルフケアで心も健康に
コロナ禍において、従業員の健康管理が注目をされました。従業員などの健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践する「健康経営」も、重要性がうたわれています。今回は、従業員の健康管理の中でもメンタルヘルスに着目いたします。
メンタルヘルスとは、こころの健康状態を指します。誰でも、気持ちが沈んだり、落ち込むこと、日々の生活の中でストレスを感じることはあります。しかし、それらが継続すると、こころの調子を崩す原因にもなります。
2015年12月から、一部の事業所でストレスチェックの実施が義務化されました。従業員は、質問票への回答を通じて、自分のストレスがどのような状態にあるのかを知り、気づくことができるようになりました。
ストレスチェックを実施しても、会社はその結果を直接知ることはできません。それでも、相談体制を構築し、従業員に告知することで、メンタルヘルス不調に陥る従業員を早期発見し、早期かつ適切な対応をとることができるようになります。
ところで、会社は、従業員への安全配慮義務を負っています。会社は安全配慮義務の履行として、メンタルヘルス不調の従業員への相談窓口を案内していれば十分なのでしょうか。
ある研究によると、ストレスチェックを実施し、結果を従業員にフィードバックするだけでは、メンタルヘルス不調のリスクを低下させる効果がないことがわかりました。本人に気付きを与えることだけではなく、その対処法を伝えるための心理教育活動が大切とのことです。
職場におけるストレスは人それぞれです。職場環境であれば対応可能なものもありますが、納期などそもそも対応困難なストレス要因もあります。従業員がセルフケアの重要性やストレスへの対処方法を学ぶことで、メンタル不調のリスクを軽減させることができます。
セルフケアと聞くと難しそうですが、インターネットにはたくさんの方法が紹介されています。特に厚生労働省の運営する「こころの耳」というページは、メンタルヘルス研修のためのツールや簡単なセルフケアの方法が紹介されており、とてもわかりやすいです。
紹介されているセルフケアには、ストレッチやヨガなど、職場の自席でも行えるものもあります。精神医療の世界でも瞑想(めいそう)が注目されていますが、腹式呼吸も効果があると紹介されています。
学んだスキルを使用する頻度が高いほど、学習効果が向上し、ストレスが低減するという研究もあります。
メンタルヘルスの向上にも、ビジネスと同様にPDCAサイクルが役立ちます。ストレスチェックに合わせて定期的な心理教育を行うことに加え、実践の場を用意することで、より健康な職場がつくれるよう願っています。