食べ物をおいしく食べるためのパートナーがお酒であるのは間違いありません。とくに、ビール、ワイン、日本酒をおつまみ無しで飲む人は、チョット危ない「のんべえ」かと…。
食前に飲むビールなどの発泡酒は、炭酸の作用で胃腸の運動を刺激して、食欲増進効果があります。また、ほどよく酔った状態では、アルコールの軽い麻酔作用で抑制がとれるので、普段抑え気味になっていた食欲が前面に出てきます。
とくに、普段スタイルを気にしている女性は、その傾向が強くなり、お酒を飲むとたくさん食べてしまいます。なので、酒宴では、普段家で食べるよりも、たくさんの食べ物を口にする人が大多数です。でもまあ、このぐらいは酒宴を楽しく過ごすためのポイントですから大目にみましょうか。
さて一次会が終わり、二次会に繰り出すと、おつまみは軽くても良いから、濃いお酒を飲む人が多くなります。いや、相変わらずビールを!という人もいますが…こうして、相当な量のアルコールが飲まれます。お酌する人がいればなおさら?
飲み過ぎれば別ですが、上手にお酒を楽しんで二次会が終了。ここで運命の時を迎えます。実は、二次会までに相当なアルコールが体に入っています。元来毒であるアルコールを分解処理するために、肝臓はフル回転で働いています。
そこで、肝臓に異変が起こります。普段の肝臓は、腸から吸収した糖分を一旦貯蔵して、体の求めに応じて糖分を再分配する役割を持っています。体は配られた糖分を使ってエネルギーを得て生きていくのです。つまり、肝臓は「物流担当」なのです。しかし、アルコール処理という急ぎの用事が多くなると、肝臓は物流担当の役割をサボり始めます。こうして、血液中の糖分が急速に足りなくなってきます。これをアルコール性低血糖と言います。
こういう状態になると、脳は体の糖分が不足していると誤判定します。結果、まだ一次会の食べ物がお腹にたっぷり残っているのに、空腹を感じるのです。そこで、いい心持ちの誰かが言います。「締めにラーメンでも食べようか!」。ああ、誰もこの誘いを止められません。かくして、昼なら充分一食分となるラーメンが胃袋におさまってしまいます。明らかにオーバーカロリーです。メタボ一直線です。「締めの…」は危険です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)