おとなの養生訓

おとなの養生訓 第34回「素材を楽しむ」 うすい味付けに慣れる

2013年11月27日 15時59分

 テレビのグルメ番組で、料理のほめ言葉として「素材の味を生かしている」というのをよく聞きます。これは、味付けが強くないことを言っています。と言うことは、素材の味を隠してしまうような味付けがよく行われることの裏返しかも知れません。

 でも、私たちは、素材の本当の味を知っているのでしょうか?身の回りで考えて、味付けされないで食べているのは、お米ぐらいじゃないかな?お肉や魚の料理には、必ず塩かしょう油か、味噌か、ソースなどの味が付いています。野菜も味なしでサラダを食べる人はまれでしょう。

 料理に味がなかったり、うすかったりすると基本的に失敗といわれます。料理に味付けがされるのは当たり前になっています。

 一方、当然ながら動物たちは、味付けなしでえさを食べています。とくに牛や馬は、人には味を全く感じられない草やわらをおいしそうに食べています。犬やライオンなどは、塩が一降りもされていない生肉をうまそうに食べています。

 おそらく彼らは、この素材の微妙な味を感じ取り、満足しているはずなのです。ですから、人間も料理を発明する前には木の実や肉など素材のまま食べていたはずですから、その微妙な味を感じ取っていたはずなのです。

 しかし、火を手に入れ、さらに塩や砂糖など様々な調味料を体に入れるようになって、実に様々な味覚を手に入れることが出来たのですが、引き替えに、素材の微妙な味から縁遠くなってしまったのです。

 そう考えると、人は調味料を発明したお陰で、味覚が退化してしまったとも言えるかも知れません。もちろん、料理人やグルメなど鋭い味覚を保持している人もいるわけですが、一般の人は味付けがない食べ物はほとんど食べないのです。

 調味料の発明は、もう一つ人間に十字架を背負わせました。つまり生活習慣病です。塩分の取りすぎで高血圧症が起こります。お砂糖などの取りすぎは肥満から糖尿病につながります。とくに濃い味付けは、塩分や糖分の過剰摂取になるだけでなく、おいしさから食べ物を食べる量自体が多くなる傾向があり、肥満に拍車をかけます。

 生活習慣病を予防するためには、うすい味付けに慣れるようにした方がいいのです。素材の味をもっと楽しむように心がけることが、現代の養生訓です。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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