休肝日という言葉があります。休刊日なら新聞のお休みの日ということです。しかし、休肝日は肝臓がお休みになる日のことではありません。そもそも肝臓は、吸収された栄養素を貯蔵し、必要に応じて身体に再分配する、問屋さんのような役割を持っています。
また、身体に生じた老廃物を分解処理する役割もあり、時には必要な栄養素を合成するはたらきも持ち合わせています。なので、肝臓は24時間お休みなしに働いている臓器であり、肝臓がお休みになってしまった時は、急性肝不全という死に至る緊急状態となるのです。
では、休肝日とはどういう意味かというと、単純にお酒を飲まない日、という意味で使われています。アルコール摂取が肝臓に負担をかけているという考えから、お酒を飲まないことで、肝臓の負担を軽減し、アルコール性肝疾患の発症を予防しようという訳です。
一般には週に2日ぐらい休肝日をもうけるのが適切であるとされます。例えば、1週間のうち、3日飲んだら1日休んで、2日飲んだら1日休む、と言った具合です。ただ、医学的な見解では、アルコールで肝臓にダメージがあった場合、1日ぐらいお酒をやめても、ダメージからの回復はおぼつかないとされます。休肝日は1週間の総飲酒量を減らして、肝臓へのダメージを予防するための方策なのです。
それでは、どのくらいの飲酒量なら肝臓へダメージを与えないのかといわれますと、1日あたり日本酒で2合以下、1週間で14合以下なら毎日飲んで、休肝日がなくても問題は少ないというのが通り相場です。日本酒2合は、ビールなら中ビン2本、焼酎なら1.2合に相当します。
つまり、休肝日が必要なのは、毎日飲酒すると1週間で14合を超えそうな勢いで飲んでしまう人です。実は酒飲みの大半の人がこれに相当すると思いますが、そういう人が1日量を減らせないなら、せめて飲まない日を作りましょうという、社会的なキャンペーンなのです。
確かに、年末年始の宴会続きで、1日2合以上の飲む機会は多くなっているでしょう。大体、2合も飲むと、勢いが付いてそこでやめることが出来なくなる人の方が多いと考えられます。1日2合以下を守るか、週2日の休肝日を守るか、いずれにしても苦渋の選択になるのでしょうか。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)