職場健診で血液検査を受けた結果、「尿酸値が高い」という診断を受けることがあります。とくに体に具合の悪いところはないし、血圧や血糖は正常な人でも、尿酸だけ高いということはしばしばみられます。ご存じのように尿酸が多いと痛風という大変な病気にかかる可能性があるので、要警戒なわけです。
では、尿酸ってどういうものかご存知でしょうか。人の体は60兆ほどの細胞で出来ています。そしてその細胞すべてが、遺伝子を持っています。遺伝子は細胞を作るためのすべての情報が書き込まれている大事なものですが、これを作る材料を核酸といいます。核酸はほかに細胞のエネルギー物質の材料にもなります。つまり、細胞はたくさんの核酸を含んでいるのです。
ところで、古くなった細胞は壊れ、新しい細胞と日々入れ替わっています。この結果、古くなった核酸がたくさん生じます。大部分は新しい細胞のために利用されますが、それでもかなりの核酸が不要になります。そこで、核酸を処理して体から排出します。
この際、核酸のそのまま出すのではなく、一旦、尿酸に変化させてから捨てているのです。つまり、尿酸は核酸のなれの果てであり、体内に生じたごみなのです。体に貯まったごみはおしっこに入れて捨てられます。なので、「尿」酸と呼ばれるのです。
尿酸が血液にたまるのは、おしっこにうまく捨てられない場合と、おしっこに捨てるのが追い付かないぐらい体で尿酸が生じる場合があります。前者の場合は腎臓に病気がある時です。実は、それより後者の場合の方が多いのです。体でたくさん尿酸ができる理由は、古くなった細胞の核酸に加えて、核酸をたくさん食べたからです。
核酸が多く含まれる食べ物は、細胞がぎっしり詰まった食べ物です。それは、卵、魚卵、内臓肉です。とくにホルモンやレバーなどはかなりの量です。それとお酒は尿酸を増やすといわれています。とくに酵母という細胞がたくさん含まれているビールは要注意。つまり、ビールでホルモンやもつ鍋、なんていう組み合わせが一番危険ということになります。
健診で引っかかった方の大半は、タラコ好きとか、ビール好きとか、お肉好きとかです。ほどほどにしないと痛風発作の痛みでのたうちまわることになりますよ。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)