おとなの養生訓

おとなの養生訓 第65回「朝風呂の功罪」 サッとつかり冷え防ぐ

2015年03月13日 16時34分

 朝はとかく忙しいものですが、それでも朝風呂に入る人がいます。朝シャンプーや朝シャワーもかなり一般的になりましたから、どうせならと湯船につかる人もいるでしょう。前の晩に遅く帰宅して、風呂に入らずにすぐに寝てしまったということもあるのでしょう。ところで、朝にお湯につかること、体にはどのような影響があるのでしょうか。

 まず、効用とされる点としては、目覚めを促し体の動きを良くするということがあります。特に熱めのお湯につかると交感神経が活動し、全身の血の巡りがよくなります。これにより頭や体が「目覚める」という訳です。

 また、血行が改善すると新陳代謝がうながされますので、カロリー消費がすすみます。その効果が朝により強くなるという説があり、ダイエット効果が期待できるといわれます。就寝中は結構汗をかくので、体の汚れを落として、清潔な体で一日がスタートできることも効用の一つでしょう。

 一方で、弊害も指摘されています。一つは、ぬるめのお湯につかると、副交感神経の活動が活発になり、体がリラックスモードになる可能性があることです。つまり、なんとなく体が重く感じ、朝に順調なスタートが切れなくなるということです。

 元来、朝は日中に備えて交感神経の活動が高まってきます。そこで熱めのお湯に入ると、交感神経の活動はますます高まり、血圧が上がり心臓に負担がかかります。ですので心臓病や高血圧の持病がある方にはおすすめできません。

 また、就寝中に相当量の水分が失われますので、朝の体は基本的に水分不足になっています。そこで入浴すると脱水状態に陥る可能性があるので、とくに脳梗塞の危険性が高くなります。さらに、入浴後は血管が開いて体の熱が失われやすくなっていますので、入浴後に外出すると体が冷えてしまう可能性があります。

 というわけで、朝風呂は功罪相半ばするというところです。私としては温泉宿の朝風呂なんかとても好きですし、結構、朝にシャワーを使うことも多いので、朝風呂は否定しません。

 40から41℃ぐらいの適温でサッとお湯につかって、上がった後の湯冷めをしないようにして、給水をこころがければ、さわやかな朝のスタートになるのではないでしょうか。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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