おとなの養生訓

おとなの養生訓 第94回「糖質制限」 素人の〝生兵法〟は危険

2016年07月08日 17時46分

 糖質制限ダイエットが大流行です。そのやり方は、糖質、あるいは炭水化物を含むご飯やパン、麺類などの食材を完全にメニューに入れないで、必要なエネルギーはタンパク質と脂質で取るというものです。糖質さえ取らなければ、肉や脂肪分はいくら食べてもいいというので、簡単で空腹に悩まなくてもいいということで、一気に広まってしまいました。

 実際、言われる通り糖質を取らないでいると、すぐに効果が表れ、1週間もすると目に見えて体重が減って痩せてきます。この方法で5㌔以上の減量に成功した人はたくさんいて、この方法を中心に据えたダイエット指導で爆発的な人気のスポーツジムもあります。あのコマーシャルで盛んにやっているあれです。

 元々、糖質制限法は治療がなかなかうまくいかない糖尿病の患者さんに対する食事療法として開発されました。実際、医師の指導管理の下で、糖質制限食による治療を行うと、それまでどんな薬やカロリー制限食もうまくいかなかった患者さんの血糖がどんどん下がって、もはや糖尿病が完治、という人もいるというのです。一方で、うまくいかない人も当然いるので、患者さんに全面的に適用するには、まだ検討が必要なようなのです。

 この糖質制限の劇的な効果に注目して、健康な人のダイエット法として使いだしたのが、今はやっている糖質制限なのです。しかし、糖質制限を続けると体重は落ちるけど、他の病気になる可能性が上がるらしく、5年以上で死亡率がむしろ上がるという研究もあります。

 また、直接の因果関係は不明ですが、糖質制限に積極的だった有名ジャーナリストと政治家が相次いで急死していたりします。つまり、素人が生兵法で取り入れるには、まだまだ危険性があるということではないでしょうか。実際に、糖質制限を始めると、たくさん食べているのに、体に力が入らないとか注意力が散漫になるとか、イライラするとか、弊害も報告されています。

 私見を述べれば、糖尿病の治療法としての糖質制限食は有効だと思います。ただ、医師の管理監督が必要でしょう。一般の方々のダイエット法として、糖質制限法はそれなりのリスクがあることを考えて、安易に取り入れない方が良いと思います。もしやるのなら、完全に糖質ゼロにするのではなく、体に力が入る程度にはご飯などを食べて、運動を組み合わせるべきでしょう。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


おとなの養生訓 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

北海道建設新聞社新卒・キャリア記者採用募集バナー
  • 古垣建設
  • オノデラ
  • web企画

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

丸彦渡辺建設が31日付で清水建設の子会社に
2023年05月12日 (16,672)
上位50社、過去16年で最高額 22年度道内ゼネコ...
2023年05月11日 (8,416)
ラピダスの工場新築で関連企業から多数の問い合わせ
2023年05月25日 (6,543)
熊谷組JV、道新幹線トンネル工事で虚偽報告
2023年05月08日 (5,925)
砂川に複合型施設オープン シロの福永敬弘社長に聞く
2023年05月22日 (4,829)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓 new

おとなの養生訓
第255回「内臓脂肪蓄積」。ポッコリお腹は悪性肥満、生活習慣の改善が必要です。

連載 ごみの錬金術師

ごみの錬金術師
廃ガラス製品を新たな姿に。道総研エネ環地研の稲野さんの研究を紹介。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第30回「職業的背景で変わる視点」。経営には慎重かつ大胆なバランスの良い判断が必要となります。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第32回「確実に伝えたい色」。青と黄色は色覚に左右されにくい「伝える色」です。