歓送迎会、忘年会、新年会…。様々な酒宴があると、2次会がつきものです。そして、2次会が盛り上がると、有志が集まってもう一カ所。そのあとなじみの店でもう一杯…。典型的なはしご酒です。しかし、はしご酒は、どうしても飲み過ぎになってしまい、おまけに懐もさびしくなってしまうので、そういう意味ではろくなものではありません。
なぜ、はしご酒で飲み過ぎになってしまうのでしょうか。いくつかの原因が挙げられます。一つは、お店が変わるたびに、飲むお酒の種類が変わることです。初めはビール、そのあと日本酒、店を変えて焼酎、最後にウイスキー、といった具合です。同じお酒を飲み続けると、何となく飽きが出てきて、量がすすまなくなるのですが、飲み口が変わると気分が変わり、そのたびにお酒がすすむという訳です。
もう一つの原因は、色々な種類のお酒を飲み、器もお店によって変わりますから、どのくらいのアルコールを飲んだのか、わかりにくくなってしまうことです。もちろん、会の盛り上がりもあるので、盃はどんどん空いてしまいます。お店が変われば、お通しやチャージなどが新たにかかるから、懐もどんどんさびしくなります。という訳で、なるべく1カ所に落ち着いて、じっくり飲んだ方が飲み過ぎを防げるので、はしご酒はしない方がいいということになります。
でも、飲み過ぎに気を付ければ、はしご酒は楽しいものです。色々なお酒を飲み比べることができます。リリースされたばかりの新酒や、掘り出し物の古いお酒に出くわすこともあります。また、様々なお店に行くことで、新しい出会いもあるでしょう。新しいお店に入って、マスターと意気投合。たちまちなじみのお店へと変貌します。常連のお客さんと親しくなって、色々な話をして仕事関係ではない人のつながりが生まれたりします。人生を豊かにする方法の一つがはしご酒なのかもしれません。
このコラムは今回で丁度100回となりました。こんなに長く続くとは思ってもいませんでした。1回、1回、テーマを掘り出して、調べて、書くということを続けただけです。しかし、回を重ねると知識が広がり、発想が豊かになってきた気がします。おとなの養生訓は、私の知的はしご酒だったのかもしれません。今後もよろしくお願いします。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)