おとなの養生訓

おとなの養生訓 第105回「エビのしっぽ」 飾りで栄養にはならず

2017年01月27日 13時37分

 ビジネスマンの昼食の定番メニューの一つに天ぷらがあります。天ぷら定食だけじゃなく、天丼、天ぷらそば、幕の内弁当など、添え物としても大活躍しています。その天ぷらのタネといえば、やはりエビです。天丼も天ぷらそばもエビがないと様にならないというか、締まりません。エビ天を食べるだけで少し贅沢な気持ちになったりします。

 ところで、エビ天といえば必ずしっぽがついています。しっぽをはがして料理することは十分可能なのに、なぜか必ずしっぽだけついています。天ぷらだけでなく刺身やすしにもしっぽが定番ですね。どうも見栄えとか、縁起担ぎとかいうのが理由の様なのです。でも、食べ物の一部として出されているので、エビのしっぽを食べる人も少なくありません。

 とくに食通の間では常識とされていることがあります。エビ天丼やエビ天そばを食べるとき、エビ天を食べた後にしっぽだけ脇に置いておいて、すべてを食べ終わったあとに、デザート(?)としてエビのしっぽを食べて締めるのだそうです。結構キザな感じですが、やってみると、口当たりが変わって、確かに締まった感じがしましたね。

 一方で、栄養満点だから、エビのしっぽを食べないのは、もったいないという人たちもいます。いわくエビのしっぽはカルシウムが豊富だというのです。とかくカルシウム不足になりやすい日本人としては、エビのしっぽで補給できるのであれば好都合です。しかし、これはほとんど望み薄だと断言できます。

 エビのしっぽ、つまりエビの殻はキチン質というもので出来ています。これは多糖類に分類される物質です。実は、人はこの物質を消化分解する酵素を持っていません。よく知られている言葉で言い換えるなら食物繊維に相当します。

 また、エビの殻はエビにとっては骨格なのですが、人など哺乳類の骨とは全く違う成分なわけです。ですから、そんなにたくさんのカルシウムが入っているわけでもありません。ましてや消化できないので、含まれているカルシウムも吸収できないわけです。

 消化しやすいように焼いたり、揚げたりすればいいという人もいますが、そうしても、消化吸収はできません。つまり、栄養にならないというのが結論なのです。エビのしっぽは、見栄えのため、キザの道具、という訳です。でも食に飾りは不可欠ですから、私はエビのしっぽ、大好きです。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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