日本における二大嗜好品ともいえるものが、タバコとお酒です。体の発育への悪影響が懸念されるため、未成年での使用は法律で禁止されており、販売についても許可制であり、宣伝広告にも一定の規制がかかっているなど、多くの共通点があります。
また、両方とも課税対象であり、価格自体にも一定の規制がかけられて、販売がコントロールされているものです。つまり、タバコとお酒は、周囲へ影響が考慮され、社会の秩序を保つために一定の制限のもとに楽しむものであるという考えが、日本での基本的な考え方だということです。
日本における飲酒の状況は、諸外国に比べて悪い状況ではないと思います。みんな一定の常識に従って、飲む場所と時間帯に決まりがあることが共通認識で、飲み過ぎなどを原因としたトラブルで厳罰を与えられても当然であると考えています。
具体的に言うと、昼間からお酒を飲みながら外をフラフラと歩いている人を見かけることはほとんどなく、職場でお酒を飲みながら仕事をする人もまずいないということです。お酒を飲みながら仕事していたら処罰されてもやむを得ません。
ところが、タバコはそうなっていません。いまだに歩きながらタバコを吸う人を見かけます。公共の場所や職場での禁煙も広がってきていますが、その周りに喫煙する人がズラリといます。もし禁煙でなければ仕事しながら当たり前のように喫煙します。「健康に悪いタバコを承知で吸っているのだから、文句は言われたくない」「誰にも迷惑はかけていない」と主張する愛煙家がたくさんいます。本当にそうでしょうか?
今、受動喫煙が問題になっています。タバコを吸わない人たちが、喫煙者の周りにいることで、必然的に喫煙していることと同じ状態となり、自分の意思がないのに、喫煙による健康リスクにさらされているからです。歩きタバコも公共の場所での喫煙も、受動喫煙を引き起こすから問題になっているのです。「誰でも迷惑をこうむって」いるのです。
タバコは、お酒と同じく、楽しむ場所を厳しく限定するべきではないでしょうか。他人に健康被害を与えていながら、「喫煙の自由」を訴えて受動喫煙のことを無視するのは、自分勝手に過ぎます。その代わり、喫煙所やタバコを提供する「シガー・バー」などがたくさんできることを奨励してもいいと思います。全国どこにも居酒屋があるように。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)