人は息、排尿、排便、発汗などにより、体から水分を失います。その量は一日で2・5㍑程度になります。そこで、毎日、水を体に取り入れなければなりません。水分補給の手段は大きく三つあり、一つは食べ物に含まれている水分で、一日で1・1㍑程度です。
また、体の中での新陳代謝により水分が生じ、これが一日で0・3㍑程度と見積もられます。この二つでは1・4㍑程度ですから、失われた水分を補うには、あと1・1㍑ほどの飲水が必要となります。これが不足すると、循環血液量が減って血行が不良になり、倦怠感やめまいなどが起こります。いわゆる脱水症です。でも水分補給が不足して軽い脱水になっている人が結構いると指摘されています。
約1㍑の水分となると、結構な量になりますね。大きめのガラスコップで0・2㍑ですから、一日に5杯ほど飲む必要があります。そうして考えると、水分補給が不足している人が結構多いのではと考えます。
コーヒーで考えると、マグカップで1杯あたり0・2㍑前後なので、やはり一日5杯。でも、コーヒーを毎日そんなに飲む人はあまりいないと思います。おまけにコーヒーやお茶にはカフェインが含まれていますが、これがおしっこの量を増やす作用があるのです。そうするとコーヒー5杯でも水分不足は解消しないことになります。なので、やはりお水を飲むことを心がけた方が得策です。
方法としては、食事の時に必ず水をコップ1杯ぐらい飲むことです。水を飲むと、食事の味が薄まってよくないという人がいますが、そんなことはありませんよね。また、水を飲むと胃液が薄まって消化に良くないという人もいますが、それも誤りです。
コップ1杯程度の水が気にならないくらい胃液は分泌されるからです。実は私は、子供のころから食事の際は基本的にコップ1杯以上の水を飲んでいます。でも、消化不良や胃もたれで悩むというようなことは全くありません。
三食でコップ1杯ずつ水を飲むとすると、あと2杯は朝起きた時と、寝る前にそれぞれ1杯ずつ飲めば、完璧です。とくに睡眠中は布団の中で汗をかき、寝息からも水分が逃げるので、水分不足になりやすいので、寝る前と朝起きの水分補給は大事です。
こうしてみると、少しの心がけと手間で水分不足は解決できるのです。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)