おとなの養生訓

おとなの養生訓 第150回「おもち」よくかみ唾液を混ぜる

2018年12月28日 07時00分

 もうすぐお正月です。お正月といえば、おもちを思い出す人も多いと思います。お雑煮はもちろん、きな粉もち、磯辺巻きなど、様々な料理として楽しめます。しかし、残念ながら、お正月はおもちによる窒息事故が急増する時期でもあります。毎年、各方面からおもちの事故に対する警告、警戒が発せられているにも関わらず、事故は減りません。自分だけは大丈夫と、皆さんが思っているからなのでしょう。しかし、おめでたいはずのお正月が、一転悲劇に変わってしまう訳です。用心に越したことはありません。

 なぜ、おもちで窒息が起こるのでしょうか。「そりゃ、のどに詰まるからだ」と言ってしまえば、そうなんですが、おもちは他の食材にくらべて、詰まりやすい性質がそろっているのです。まず、どこに詰まるのかということです。

 のど全体におもちが詰まっているということは、意外とありません。実際は、のどに引っかかるのです。引っかかる場所は喉頭蓋(こうとうがい)です。喉頭蓋は、食べ物がのどを通過するときに、気管に食べ物が入らないように蓋をするものです。おもちは粘り気があるので、閉まろうとする喉頭蓋に引っかかって、のみ込めなくなってしまうのです。のどのこのあたりはとりわけ狭くなっているので、引っかかったおもちがのどを塞いでしまうのです。

 よくかまないでのみ込むから窒息すると言われますが、普通にかんでのみ込んだとしても、引っかかる恐れがあるのです。引っかからないためには、もちろんよくかんで、十分小さくすることも大事ですが、かむことで、唾液をおもちによく混ぜ込むことが重要です。唾液のネバネバ成分で小さくしたおもちを
包み込んで、のどの粘膜との間の摩擦を減らすことが肝要です。

 お年寄りはのどの粘膜が乾燥しがちになっているので、おもちがのどにくっつきやすくなっているので、なおさらです。摩擦を減らすという意味では、おもちを食べるときに、汁や飲み物を合わせるのも方法です。そうすると、汁たっぷりのお雑煮は最適といえます。一方、おもちをきな粉でまぶしている場合は要注意です。

 おもちで正月を祝うのですから、あわてず騒がず、心静かに、ゆっくりと味わう心掛けが肝要だと思います。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


おとなの養生訓 一覧へ戻る

ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

三菱電機のビル・施設向けソリューションはこちら
  • 日本仮設
  • web企画
  • 東宏

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

おとなの養生訓 第245回 「乳糖不耐症」 原因を...
2023年01月11日 (1,504)
藻岩高敷地に新設校 27年春開校へ
2022年02月21日 (1,458)
おとなの養生訓 第43回「食事と入浴」 「風呂」が...
2014年04月11日 (1,405)
交通体系整備を考える会、札幌外周高速道を構想
2023年06月20日 (1,278)
ヒトデ由来成分でカラス対策 建設業界に鳥類忌避塗料...
2019年06月28日 (1,224)

連載・特集

英語ページスタート

construct-hokkaido

連載 おとなの養生訓

おとなの養生訓
第258回「体温上昇と発熱」。病気による発熱と熱中症のうつ熱の見分けは困難。医師の判断を仰ぎましょう。

連載 本間純子
いつもの暮らし便

本間純子 いつもの暮らし便
第34回「1日2470個のご飯粒」。食品ロスについて考えてみましょう。

連載 行政書士
池田玲菜の見た世界

行政書士池田玲菜の見た世界
第32回「読解力と認知特性」。特性に合った方法で伝えれば、コミュニケーション環境が飛躍的に向上するかもしれません。