「最近、毎晩のように夢を見るのだけれど、どこか調子が悪いのだろうか?」という質問を、よく受けます。そして、そういう人は夢を見ないで眠ったことが快眠であると信じていまして、昔は夢なんか見なかったと強調されます。でも、本当は違うのです。
そもそも、人はなぜ夢を見るのでしょうか?まだ、不明なことも多いのですが、レム睡眠と呼ばれる睡眠の状態になった時、夢を見ていると推定されています。人の睡眠は大きく二つの状態が交互に現れます。
一つは徐波睡眠といって、脳波がゆっくりと動き、脳の活動が低下した状態で、いわゆる「深い眠り」になります。もう一つをレム睡眠といい、脳波が細かく動いて、脳の活動が比較的活発であるように見えます。しかし、このとき筋肉は完全に弛緩し、睡眠の状態であることは間違いないのです。
レム睡眠の時に脳の活動が活発化することと、夢を見ることに関係があると考えられているのです。もしレム睡眠が起こらないと、人は何時間眠っても良く眠ったという感覚が得られず、目覚めの後も頭が重く、すっきりしないということが分かっています。
人は脳の一日の疲れをとるために睡眠しますが、レム睡眠が脳の疲労解消に重要であると考えられるのです。夢は脳の疲労解消のための作業工程である可能性が高いのです。
人は毎晩、数回レム睡眠になります。ということは、おそらく毎日、夢を見ているのです。でも、夢というのは、もともとあまり記憶に残らないものなのです。むしろ一日の記憶の整理整頓をして、不要なものを消去するのが夢の働きなので、覚えていないことの方が自然といえるのです。
つまり、毎日夢を見るけど、目が覚めるとすぐに忘れてしまうのが普通なのです。じゃあ、なぜ夢を覚えているのかというと、目が覚める時間帯がレム睡眠と重なっているからだと考えられます。それでも、朝覚えていた夢は、お昼には夢を見たという事実以外はほとんど忘れてしまっているものです。
毎日夢を見るのは、病気ではありません。どうしても気になる人は、朝、目覚ましをかける時間を15分ぐらい、前後にずらしてはいかがでしょう。レム睡眠ではない時に目が覚めれば、夢を見たことはほぼ忘れています。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)