今、アメリカ合衆国で作られるウイスキー原酒のことをバーボンといっています。でも、本当は、バーボンはアメリカ中西部、ケンタッキー州のバーボン郡で作り始められたウイスキーのことです。材料は大麦だけのスコッチウイスキーと違い、50%以上のトウモロコシを使い、他は、ライ麦、小麦、大麦が加わります。
バーボンというのは、フランス語の「ブルボン」の英語読みです。ブルボンは中世フランスに君臨した王家の姓です。アメリカ独立戦争のときにブルボン朝フランスが応援してくれたので、それに感謝して、ケンタッキー州の郡の名前にしたのだそうです。だから、本当は「ブルボンウイスキー」というべきなのでしょう。
バーボンウイスキーは同じ製造法によりケンタッキー州で広く作られるようになり、それをすべてバーボンウイスキーと呼ばれるようになりました。実は隣のテネシー州でも同じ製造法のウイスキーが作られているのですが、製造者は誇りを込めてテネシーウイスキーと表示しています。有名なジャックダニエルがそうです。というわけで、少なくともケンタッキー州産のウイスキーをバーボンと呼ぶのが正しいと思うのですが、アメリカでは法律で決められた製造法で作られたアメリカ産のウイスキーはバーボンと呼んでいいことになっています。
私は若いころからウイスキー好きです。実は、日本酒は甘くて気持ちが悪く、ワインは酸っぱくてだめ、ビールは苦いと敬遠していたのです。もちろん、今はすべておいしくいただいていますが。そんな私がバーボンと出会ったのは20代後半。その頃は関税の関係で高級ウイスキーでした。でも、バーボンの主成分であるトウモロコシの香りに魅せられて、バーボンばかり飲むようになっていました。
ウイスキーはストレートで味わうのが本道と考えられています。もちろん、バーボンもそうなのですが、意外とお勧めなのはロックで飲むことです。ウイスキーの香りを楽しむためには、少量の水を加えるといいとされます。水割りではありません。少量の水を垂らすのです。ロックにすると、氷の表面が徐々に溶けて、バーボンのトウモロコシの香りを引き出してくれるのです。バーボンはロックが最高です。あくまで個人の意見ですが…。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)