二日酔いの時、サウナに入ると二日酔いが解消できると考えている人が結構います。でも、本当は危険なことと断言できます。むかし、有名歌手が突然の脳梗塞に倒れました。スタイルを維持するため、毎日サウナに入って、体重を絞っていたのだそうです。前日、お酒を飲んでも、飲まなくても、続けていたそうです。脳梗塞の原因になる糖尿病もすでに発症していたのですが、体重が減れば大丈夫と信じていたそうです。サウナは、脳梗塞発症の引き金を引いたのです。
そもそも、二日酔いはなぜ起こるのでしょう。まず、前夜のアルコールが体内に相当量残っていて、酔いの状態が続いている場合です。かなりの量のアルコールを取っているので、両日にわたっておしっこの量が増えています。
この結果、体は水分不足、つまり脱水状態となっています。酔いと脱水で、頭がくらくらする、頭痛がするなどの症状が出ます。さらに、悪心(おしん)を感じることになります。さらに、アルコールが分解されると生じてくるアセトアルデヒドが気分を下げ、頭痛などの症状を強めます。
一方、酔い自体は翌朝までに、ある程度醒めていたとしても、脱水状態は解消していないことも多く、アセトアルデヒドも残っているので、頭がくらくらするや悪心などの症状は、やはり出てしまうことがあります。二日酔いの症状は、脱水状態とアセトアルデヒドに起因するものです。
サウナに入って汗をたくさんかけば、残っているアルコールが汗と一緒に流れ出る、と考えている人が多いようなのですが、アルコールは汗にはあまり含まれてはいません。それ以上に、アセトアルデヒドも汗には出にくい性質があります。つまり、サウナで汗をたくさんかいても、酔いから早く醒めることはないのです。
一方、二日酔いの原因である脱水状態は、サウナで汗を大量にかくことで、非常に悪化します。汗として大量の水分を失うのですから、当然ながら危険性が高まるのです。サウナの中で汗をかき切って、体温上昇が抑えられなくなり、熱中症になって倒れてしまうかもしれません。また、血液の水分も減少するので、血液が固まりやすくなり、最悪、固まってしまった血液が血管に詰まり、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こす危険性があります。これは生命を危険にさらすことです。
二日酔いでサウナに入るのは、ほぼ、自殺行為です。おやめください。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)