来る25日、北海道マラソンが札幌で開催されます。オリンピック級の選手と、一般市民ランナーが同時に走る、国内でも数少ない大会です。北海道のランナーには「お祭り」なのですが、多くの市民の方には長い交通規制でご迷惑をおかけします。
50歳代になってランニングを始めた私も、今回で7回目の参加となります。一応、過去6回、制限の5時間をクリアして完走しているのですが、何回も後半で歩いてしまう目に遭っています。
8月末のまだまだ暑いさなかですので、非常に厳しいマラソンであることは間違いありません。とくに、ランナー仲間で有名な「魔の新川通」。この通りの長い直線を、一切の日陰なく、石狩市近くの折り返し点まで延々と走り、また、戻ってくるのです。大抵、ここでみんな〝やられて〟しまいます。息が上がったり、脚がつったり、故障個所が痛み出したりして、歩き出す人が続出します。
脚のつりが治らず、その場で動けなくなる人、気分が悪くなって吐いてしまう人、最悪、気が遠くなってしまう人まで出てきます。友人の医師に聞いた話では、救護所は野戦病院のようになるそうです。そうなることを覚悟しながら、なんで走るんでしょう?それは、記録ではなく、ゴールした時の言いつくせぬ達成感のためなのです。
マラソン中のトラブルのほとんどの原因は、脱水症とそれに引き続いて起こる熱中症のためです。暑い中で走るために、体温は上昇傾向になります。そこで、体温上昇を防ぐために、盛んな発汗が起こります。発汗が最長、制限の5時間近く続くのです。体の水分は圧倒的に失われます。もちろん、走行中に給水を繰り返すのですが、大抵は追い付きません。順調に完走しても、体重は最低2㌔ぐらい落ちるのです。
もっと脱水が進むと、汗が出なくなってきて、脚のつりが出てきます。もし、つらなくても、急速に体温が上がり始め、息が上がり、熱中症になります。こうなると、悪心、嘔吐、めまいが出てきます。そして、急速に血圧が下がり、意識を失います。
対策はただ一つ、給水をスタート直前から、給水所ごとに繰り返すことです。のどの渇きを感じてからでは遅いので、予防的に給水します。トイレに行きたくなっても仕方ありません。そして、塩分補給を兼ねた給食を早めに。スタート後1時間以内に始めておきましょう。
今年も、この方法で頑張ります!
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)