メタボリック症候群という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。最近はメタボと省略されて使われることも多いようです。ただ、メタボリック症候群とは単純に太っていることを示す言葉ではありません。内臓脂肪が増えることにより、血液中の脂肪が増えたり、血圧が高くなったり、糖尿病一歩手前に陥ったりしている状態を示しています。放置すると、動脈硬化が進行して、本格的に糖尿病となったり、脳梗塞、心筋梗塞など動脈硬化による重大な疾患が起こったりします。つまり、メタボリック症候群は病気ではなく、病気が起こりやすくなる状態を示している言葉です。
そもそも内臓脂肪とはどういうものでしょうか。人の脂肪は大きく二種類に分かれます。一つは皮膚の下にある皮下脂肪です。この皮下脂肪がもっぱら貯まった状態の肥満は、メタボリック症候群にはなりません。もう一つの脂肪が内臓脂肪です。お腹の中に腸や胃を背中につなぎとめる膜があり、これを腸間膜と呼びます。この腸間膜には通常でもある程度脂肪が付着しているのですが、これを内臓脂肪と呼びます。
内臓脂肪が過度に付着して分厚い脂肪のシートのようになると、メタボリック症候群となるわけです。外観からは「ポッコリお腹」と呼ばれるお腹周りが大きくなる状態になります。よく、肝臓に脂肪がたまる脂肪肝という病気と、内臓脂肪を混同されることがありますが、まったく別なものなのです。
内臓脂肪は、単なる脂肪組織ではなく、体のエネルギー代謝を調節するホルモンを分泌する役割も持っています。内臓脂肪が増えると、このホルモンの作用が悪くなり、メタボリック症候群を引き起こすと理解されています。
内臓脂肪を蓄積しないようにするにはどうしたらいいのかというと、やはり、食べ過ぎない、適度な運動に心掛ける、お酒を飲み過ぎない、ということがあげられています。つまり、単純に太らないようにするということです。
さらに、メタボリック症候群により動脈硬化が進み、重篤な病気を引き起こすので、動脈硬化を悪化させる喫煙はやめる必要があると考えられます。サウナや公衆浴場で、ポッコリお腹を見かけることが多いようです。皆さんもくれぐれもお気を付けください。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)