新型コロナウイルスなどのウイルスは、もともと非常に壊れやすいものです。もし壊れやすいものでなければ、空気中をいつまでも漂って、人々に根こそぎ感染して大流行します。もちろん、そんなウイルスは存在しません。実際、新型コロナウイルスは空気感染を起こしません。
ウイルスを壊すものはさまざまあります。まず、熱です。ウイルスはタンパク質と遺伝子でできていますが、この2つの物質は熱に非常に弱いのです。100度になれば確実に破壊されてしまいます。だから煮たり焼いたりした食べ物にはウイルスはいないのです。さらに、強い酸性の状態でもウイルスは破壊されます。お酢はpH2・8と強力な酸性ですが、その中では一気に死滅します。
また、ウイルスは紫外線に対して非常に弱いことも分かっています。日なたの壁や地面などにウイルスは全くいないのです。もちろん、晴れの日の空気中にもいません。
乾燥に関しては、乾燥に強いウイルスが確かに存在します。有名なものは激しい下痢を引き起こすノロウイルスです。しかし、新型コロナウイルスは、乾燥に対しては、あまり強くないと考えられています。
新型コロナウイルスは、さらに大きな弱点を持っています。それは、せっけんを代表とする界面活性剤に非常に弱いということです。界面活性剤は水の中に存在すると、脂の塊を細かく砕き、小さな粒子に丸め込んでしまいます。この仕組みで、油汚れは落ちるわけです。
新型コロナウイルスは遺伝子を保護するために、脂の膜を持っています。界面活性剤がこの膜に触れると、膜を砕き、破壊します。そうすると遺伝子はむき出しとなり、遺伝子も傷み、ウイルスは死滅したことになります。この反応は瞬間的に起こります。代表的な界面活性剤であるせっけんやアルコールは、新型コロナウイルスを強力に死滅させることができるのです。
という訳で、せっけんを使って手を洗うことは、一番効果的な感染防御法であると断言できます。もう3カ月以上も手洗いのキャンペーンが行われ、皆さんもその重要性はご存じと思いますが、キャンペーンが長期になり、手洗いに対する意識が少し弱くなっているように感じられます。せっけんの力、見直しましょう!
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)