グリコーゲンをご存じでしょうか。動物の筋肉や肝臓にためられている炭水化物のことです。一方、植物にためられている炭水化物をデンプンといいます。これはご存じでしょう。植物では、穀物やイモなどに含まれています。これらは将来の子孫の発芽や成長に必要なエネルギーをデンプンとしてあらかじめため込んでいるわけです。
対してグリコーゲンは目的が異なります。肝臓のグリコーゲンは、動物が空腹になった時に、全身にエネルギー供給を行うことに備えてためられています。筋肉内のグリコーゲンは、空腹時に筋肉のエネルギー源として消費されます。筋肉は空腹時に肝臓のグリコーゲンの恩恵を受けられないので、筋肉のグリコーゲンは筋肉専用となっているのです。グリコーゲンは「動物のいも」と表現できる存在なのです。
実は、グリコーゲンとデンプンは、全く同じ成分から作られます。それは、グルコース(ブドウ糖)です。グルコースは細胞のエネルギー源として基本的かつ効果的なものです。このグルコース分子が数千から数万個も鎖のようにつながったのが、グリコーゲンやデンプンです。
グリコーゲンとデンプンの違いは、大きさとわずかなつながり方の違いといわれています。このとてつもなく大きな分子から、必要に応じてグルコースを取り出して利用したり、逆に、グルコースを付け加えて貯蔵したりするという仕組みです。
グリコーゲンは動物の肝臓で初めて発見され、重要なエネルギー物質として注目されました。そして牡蠣(かき)に豊富に含まれていることが分かり、かきエキスは人を元気にするともてはやされました。そこで、子供たちのためにかきエキス入りのキャラメルが作られ、グリコーゲンにちなんで「グリコ」と名付けられたそうです。私たちの年代では、グリコと聞くと元気を連想します。
体にグリコーゲンをためるためには、必ずしもグリコーゲンを食べなければならないわけではありません。デンプンを食べても、グルコースとして吸収され、肝臓や筋肉でグリコーゲンとしてためられます。
つまり、適切な量のデンプンを食べれば、グリコーゲン不足にはなりません。元気をつけるためにご飯もう一杯!とすると、余計な分はグリコーゲンにはならず、脂肪になりますのでお気を付けて。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)