おとなの養生訓

おとなの養生訓 第193回「酒豪」 酒に飲まれず節度守る

2020年10月12日 09時00分

 酒豪という言葉があります。お酒を大量に飲める人のことですが、単純に量の問題ではないようです。お酒を次から次へあおって、浮かれて騒ぎ出す人、大声を出す人、むやみに怒り出す人、ハラスメントをする人、具合が悪くなる人、気を失う人、こういった醜態をさらす人は、どんなに飲めても酒豪とはいわず、時に「飲兵衛(のんべえ)」と呼ばれます。

 酒豪とは、大量のお酒を長時間にわたって楽しんでも乱れることなく、節度をもって周りと接する人のことです。飲兵衛に対して敬意はありませんが、酒豪に対しては敬意とせん望が込められています。しかし、そんな理想の酒飲みなんているのだろうかと、お思いかもしれません。実は、私が若い頃の先輩で、酒豪といえるかもしれない人がいました。

 その人は、普段はむしろ物静かな人です。宴会の誘いを断ったところを見たことはもちろんありません。1次会の頃は、淡々と飲んでいます。そのペースは、われわれに合わせてくれているのか、速くはありません。食事も楽しみ、われわれのくだらない話にもニコニコして付き合ってくれます。

 そして、全く自然にみんなで2次会へ繰り出します。彼のペースは変わりません。休むことなく、淡々と飲み続けます。そして、3次会。われわれはもうすっかり酔っぱらっていますが、彼は淡々。そこで、そろそろと思って、「先輩、次のお酒にします?」と水を向けると、「じゃあ、そろそろ日本酒か焼酎で…」と。

 ここからペースは変わります。決まってコップ酒。水のように「パカパカ」と喉に注ぎ始めます。もちろん、乱れません。あっという間に数合の酒が消えてしまいます。3次会が終わって、ヘロヘロになったわれわれが帰ろうとすると、「當瀬さん、帰るんですか?」と優しく確認されます。私は沈没覚悟で、先輩が帰る明け方まで…。

 本当に強い人でした。仕事も知識もピカ一でした。あの先輩は酒豪といっても差し支えないと思っています。顔が赤くなることがほとんどなかったので、アルコール分解酵素が強力な人だったのでしょう。でも、もちろんアルコール依存症でもありませんでした。

 飲むとすぐ顔が赤くなる私が相手すべき人ではありませんでしたが、お酒を強要されたことは一度もなく、話が面白かったから、酔っぱらっても付き合えたのです。本当にすごい人でした。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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