カロリーオフをうたったお酒が、多く出回っています。体重を気にする人は、食事だけでなく、食事中のお酒のカロリーも気になるというわけです。お酒にカロリーがなければ、遠慮なく(?)飲めるという考えもありますね。ところで、お酒のカロリーとはどういうものでしょうか。
お酒のラベルにカロリーが書き込まれているものがあります。特にビールや発泡酒などの缶に印刷されていますね。これは、基本的にお酒に含まれているアルコールと糖質の量から割り出されています。アルコールは1㌘当たり7㌔㌍、糖質は4・1㌔㌍です。なんと、アルコールは糖質より高カロリーなのです。
高カロリーだから、燃料として使用しやすく、アルコールランプや自動車エンジンに使ったりしています。しかし、これはアルコールを全て燃やす燃料とみなした場合の数値です。体の中でのアルコールの振る舞いは、違っているのです。
アルコールは体内に入ると肝臓で分解処理されます。分解にはエネルギーが必要で、肝臓があらかじめ持っていたカロリーを消費するのです。
分解処理の結果生じた酢酸は、エネルギー源になるのですが、それで生じるカロリーは、分解処理に使った分の1・5倍程度です。差し引き、アルコールによってたまると思われるカロリーは1㌘当たり3㌔㌍以下となります。結果として、アルコールは糖質より低カロリーであるといえるのです。ですから、缶の表示はかなり割り引いて考えなければならないわけです。
そして、アルコールによって生じる体の反応も考慮すべきでしょう。お酒を飲めば、大多数の人は、血管が開いて、心拍数が上がります。軽く運動しているような状態になり、これが数時間続くのですから、これの消費カロリーもばかになりません。
こう考えると、お酒のカロリーだけで太るということは考えられないのです。実際、さまざまな研究は、飲酒を続けて、他にほとんど食べ物を口にしないと、確実に痩せることを示しています。というわけで、アルコールのことを「エンプティカロリー(空のカロリー)」と呼ぶのです。
飲酒により太るのは、同時に食べる物の量が増えるためと思われます。確かにお酒は食事を楽しくし、おいしく感じさせます。注意すべきはお酒のカロリーではなく、食欲の方です。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)