行政書士池田玲菜の見た世界

 アンパサンド行政書士事務所の池田玲菜代表が、行政書士の視点から連載するコラム。(北海道建設新聞本紙3面で、毎月第1木曜日に掲載しています)

行政書士池田玲菜の見た世界(2)一万超の許認可が主戦場

2020年11月06日 09時00分

前職経験で得意分野形成

 日本にある許認可の種類は一万以上と言われています。それが行政書士の主戦場です。それぞれの行政書士が得意分野を持って業務に当たっています。

 多くの行政書士には、行政書士となる前のいわゆる前職があります。得意分野の形成には前職の経験を生かすことが多いと感じています。ゼネコンで働いていた方が建設業の許可に特化したり、小売業で働いていた方が記帳代行をメインとして活躍するという具合です。

 私は、前職ではIT企業の法務部門におりました。在勤中は、著作権などの知的財産権に関する研究をしたり、契約書を作成していました。その経験を生かして、今でも契約書作成のご依頼を多く頂いております。

 契約書作成は「権利義務または事実証明に関する書類」に該当し、れっきとした行政書士の業務です。契約を遂行する過程で生じ得る問題をあらかじめ想像した後、その妥当な解決方法を検討し、文章化していきます。

 契約の種類によっては民法に限らず、下請法や不正競争防止法など幅広い法律の知識が必要となり、そればかりか日本語に関する精緻な感覚も必要となります。六法を参考にしながら複数の国語辞典や文章の書き方事典を並べ、文章を紡ぐ作業です。

 契約を締結する者の安心・安全の確保のためにも、行政書士界の今後の発展のためにも重要な分野ではありますが、その難易度により、得意としている行政書士は少ないと感じています。

 文章作成を業務としていた経緯から、補助金の申請とその事業遂行支援の依頼も受けるようになりました。2013年冬に友人の紹介でお会いした社長が、翌年、いわゆる「ものづくり補助金」に申請することとしたことがきっかけです。

 その当時のものづくり補助金は、今より製品開発を支援する傾向が強いものでした。ペルチェ素子という新しい技術に対して、高校の理科で勉強したエネルギー保存の法則で挑みました。全く未知の分野でしたが、一生懸命聞き取って、想像力を働かせた経験でした。

 補助金の申請業務とは、企業の営業内容の聞き取りから始まります。現在の事業概要、経営理念、業界でのポジショニング、事業を通じて社会にどのような貢献をしたいのか、今後の業界予測と事業展開の展望など。それらの要素をまとめ、文章にしていきます。補助金の申請を得意としている行政書士は少ないのですが、会社が有している知財を新たな事業に結び付け、それを文章化するという非常に行政書士らしい業務だと感じています。

 行政書士のような外部機関に頼らなくても補助金の採択を受けることはできますが、日常業務に加え、慣れない作業をすることは困難なことです。経営において重要なことは、自分にしかできないこと以外は他の人に任せることだと思います。

(北海道建設新聞2020年11月5日付3面より)


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