新型コロナウイルス感染拡大が止まりません。10月には札幌の歓楽街でのクラスターが多かったのですが、11月に入って札幌全域から北海道全域にまで感染が広がってしまいました。どうしてなのでしょうか。
感染拡大を防止する方策として、クラスター対策という手法が取られています。感染陽性者が見つかると、その人の濃厚接触者を調べ、検査や隔離を行って、それ以上の感染拡大を防ぐという方法です。7月から9月まで、本州で第2波と呼ばれている感染拡大の時期に、北海道で感染があまり広がらずにいたのは、このクラスター対策が奏功していたと考えられます。
しかし、10月以降はそのクラスター対策が必ずしも有効とは言えない状況に陥りました。これには、感染経路不明の陽性患者が増えたことが関係していると思われます。感染経路不明ということは、どこで感染したのか分からない、いわば、いつの間にか感染した、ということです。こういうケースはクラスター対策の発端にはなりますが、クラスター対策によって察知することはできません。
では、感染経路不明の人はうつされたことを忘れているのでしょうか?それは考えにくいでしょう。うつされて1週間以内に発症するからです。したがって、「見えない感染」が起こったと考えられるのです。
新型コロナウイルスは、発症する1日前から飛沫(ひまつ)などで体外へ放出されます。さらに、ウイルスは放出され続けているのに発症しない無症状感染者が、かなりの数に上ることが分かってきました。
つまり、見た目には感染していると分からない人からウイルスがうつってくるのです。これが見えない感染です。そして、うつされた人も無症状感染者となり、他の人に感染を広げます。見えない感染の連鎖が起こるのです。
こうなると、もう経路は追えません。それまで誰も感染者が出ていない地域、職場、家庭に、ある日突然、発症した人が現れるのです。クラスター対策だけでは抑えられなくなります。
ワクチンがあれば、この見えない感染は抑えられますが、ワクチンがない現状では、感染の危険から身を守る努力が必要になります。こまめな手洗い、不特定多数の人が集まる場所は避ける、三密回避、そして、自分が無症状感染者と考えて、人にうつさないようにマスクをして、握手など直接接触しないようにするということです。お互いを思いやって頑張りましょう。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)