働く人を大切に 事業発展
仕事柄、さまざまな業種の方とお会いしますが、昨今はどの業界でも、人材不足の悩みを抱えているようです。「どこかにいい人いない?」といった相談から、求人を出しても応募が集まらないといった嘆きまで、幅広い声を聞きます。
コロナ禍により離職者数が増加し、人材が不足している業種・職種への転職が増えるのかと思っておりました。北海道でも主に現場作業への転職について、従業員側にも企業側にも奨励金を出す「異業種チャレンジ奨励事業」を実施しています。しかし、業種の変更は、雇われる人にとって大きな問題なのか、企業での人材不足は解消しきれてはいないようです。
少子高齢化とともに生産年齢人口は減少し、社会全体の労働力も減少していきます。人材不足は、人繰りや労務管理を煩雑化させ、会社が負担する採用コストも増加させるといった負担増のみならず、受注量を制限させる必要があることもあり、経営に多大な影響を与えます。
会社は、入社してくれる人材をどうにか確保するとともに、魅力ある職場となり離職率を減らすため、待遇の改善を図っています。「従業員を大切にする」という月並みな言葉ではありますが、社長によってさまざまな考え方があるのを感じます。
福利厚生の一環で、週に一度、無料社員食堂を提供している会社がありました。若く、一人暮らしの従業員がきちんと食事を取れているのか心配になった社長が、心配をする代わりに全社員に昼食を提供することとしたようです。メニューは3種類のローテーションですが、食べ応えもあり、社員の評判も上々だそうです。地方の営業所には冷凍して配送もしているとのことでした。
費用を掛けた施策でなくとも、従業員一人一人に「お疲れさま」と必ず声を掛け、日頃の変化に気を配るようにしたことで、従業員の意識向上が図られ、職場定着率も上昇したことを語った社長もいらっしゃいました。従業員に、自分が会社にとって大切な人間であるという認識、いわゆる自己有用感を高めさせるための行為です。簡単ですぐに始められるうえに効果もあります。
外国人技能実習生を雇用し、人材不足を補っている場合もあります。外国人の雇用には言葉の壁、文化の壁があります。帰国時期が定まっている場合もあります。それでも「外国人には、誠実さ、真面目さ、熱心さがあるので、当社の事業にとってかかせない存在である」と語る社長もいました。会社にとって重要な存在として、分け隔てなく技術習得を促しているようです。
従業員を大切にしている会社には、不思議な魅力を感じることが多いです。事業の資本は人であり、働く人を大切にすることこそが、事業の発展に結び付くことを感じます。
(北海道建設新聞2021年8月5日付3面より)