エネ消費量は従来比18%削減
から屋(本社・札幌)は、機械で強制給気して自然の力で排気する「第2種換気」を唱える1級建築士事務所。ダクトレス全館空調システムのエコブレスは、各部屋への熱搬送効率が良いほか、ライフサイクルコストを抑えられるため、全国のビルダーから支持されている。最近はハイブリッド換気ユニットを開発し、道の省エネルギー・新エネルギー促進大賞で奨励賞に選ばれた。
2015年9月に設立。森田孝之社長はもともと道内の住宅会社で1級建築士として務め、から屋設立後に空調設計やエネルギー計算に特化した商品を開発し、ダクトレス全館空調システムの設計手法で特許を取得した。
社名の「から」は空気の〝空〟を音読みしたもので、空気質の分析調査や空気熱の効率利用商品化、空気の浄化手法など「人間に必要な空気に関する何でも屋さん」の意味を込めたという。
シックハウス症候群の軽減を目的に、24時間換気システムの設置が03年の建築基準法改正で義務化されている。換気には大きく4種類あり、空気を機械のモーターで入れてモーターで抜く第1種換気、モーターで入れて自然に排気する第2種換気、自然給気してモーターで強制排気する第3種換気、自然に給・排気するパッシブ換気に分けられる。
から屋は第2種換気を提唱する。自動車の換気と同じ仕組みで、空気の拡散効果が高いメリットがある。森田社長によると、同じモーター能力なら第2種換気が最も換気効率が良いという。ただ、「気圧が掛かる分、壁内結露の防止に気をつけなければならない」と話し、圧力の掛かりすぎない排気口の設計が重要になると解く。
エコブレスは、第2種換気による強制給気と自然対流を組み合わせることで、各部屋への熱搬送効率を高める全館空調システム。暖房機器は床下のみに設置し、得意とする対流解析技術を駆使し開口設計することで、ファンやダクトを設けることなく温度むらの無い住環境をつくる。
各部屋に暖房機器を置かずに済み、インテリアをすっきりさせるメリットがある。対流暖房は家の表面温度を室温に近づける効果があり、室温の設定温度が低くても暖かく感じる人が多いという。
ビルダー向けに勉強会を開催し、ライセンス契約のもと全国でシステムを普及させている。9月時点で代理店は39社に上る。熱計算から施工の指導までトータルでサポートするのが、から屋が支持されている最大の要因だ。
最近は、ノーステック財団の「札幌型環境エネルギー技術開発支援事業」に採択され、2年越しでハイブリッド換気ユニットを開発した。第2種換気とパッシブ換気を融合した装置で、外気温が低くなると増える自然換気量を加味し、ファン動力を自動制御することで冬季の過換気を防ぐ。
エネルギー消費量は従来システムより18%削減。作動する温度域を自由に制御できるため、夏場の外気を強制的に取り入れられないパッシブ換気の悩みをカバーする点もポイントだ。PM2・5や花粉などを捉えるクリーンフィルターを組み込むことができ、室内汚染濃度を減らす効果もある。
今後は、開発中のAIを活用したエコブレス用の対流解析ソフトを完成させる予定。実現すれば空気環境に関心の高い設計事務所でも手軽に熱対流の解析業務に取り組むことができ、「省エネ性や健康面で優れる第2種換気の普及にもつながる」(森田社長)とみている。
(北海道建設新聞2021年11月8日付3面より)