全員の知恵でアイデアを形に
下川フォレストファミリー(本社・下川)は、下川森林組合の事業から法人化され、集成材や内装材などを製造する。ウッドショックなどの影響による木材価格の乱高下や住宅需要の減少など苦境が続く中、新たな事業を模索。木製の足踏み式消毒液スタンドなど木工品の製作にも力を入れている。

15人で木工品の製作に励んでいる
面積の9割を森林が占める下川町には森林組合のほか木材加工に関わる業者が複数いて、主要産業である林業を支える。
ひき板を接着させる集成材事業は、下川森林組合が担っていたが、不採算の状態が長く続いたことから事業を断念。地域経済への影響も考慮し協議を重ねた結果、新たに設立した会社へ集成材事業を引き継ぐことに決め、2014年に同社が誕生した。
7月に社長に就いた大岡忠幸氏(69)は、朝日町(現士別市)の実家で木材加工業を営んでいたが閉業。知人の紹介で下川町に移り住んだのが12年の夏のことだった。
アルバイトとして森林組合に勤めるうち、当時の組合長に能力や経験を認められ参与になった。その後、誕生したばかりの同社社長に就任した組合長から誘われ入社。「そこからあっという間に時間が過ぎ、気がついたら社長になっていた」と振り返る。
住宅の梁や柱に使う構造用集成材と家具などに使用する造作用集成材の取り扱いが主要事業。部屋の壁に貼り付ける羽目板やフローリングも製造し、住居改修などに使われる。
加工した木材は広く普及。隈研吾氏が監修し、5月に東川町で完成したサテライトオフィス「KAGUの家」にも集成材が使われているという。
だが、同社を取り巻く情勢は厳しい。ウッドショックの影響で高騰した木材価格は、外国産木材の品薄状態が緩和したこともあり徐々に下落。道産材の価格も下降傾向にあるという。
木材価格が安定しない状況の中で住宅需要が下がり、集成材や内装材事業にも影響が出始めている。「今後ずっとここで仕入れると話して去年取り引きした会社から、今年は連絡が来ないこともあった」と苦い経験もした。
このため、住宅需要に左右されない新しい事業を見つけ出すことが必要と考える。
木製の足踏み式消毒液スタンド「樹々 JYU-JYU」を製作したのはその一環。コロナ禍で消毒の習慣が定着したことで、需要があるのではないかと着目したことがきっかけだ。
町の交付金も活用し、森林認証を受けた町産材を加工した。木目を際立たせることや、取っ手をクマゲラの形にするなど自然を表現したスタンドは、道経済部主催の22年度新技術・新製品開発賞デザイン部門で大賞に輝いた。
加工技術を高めるため数年前に3Dルーターを導入。特殊な加工を施すことが可能になり、十二支の文字が入った手のひらサイズの臼ときねも製作。ふるさと納税の返礼品にもなるという。

部屋に飾れる臼の文字は3Dルーターを使った
「全員で知恵を集めて新しいアイデアを形にしていければ」と苦境を乗り切る構えだ。
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