先日、うっかりしてレースとドレープ(厚地のカーテン)を一緒に引いてしまいました。ひんやりした空気が室内に流れ込み、今年の冬の到来を感じた瞬間でした。同時に、窓ガラスの熱損失と格闘しながら室温をキープしてくれるカーテンの実力に、気付いた朝でもありました。
日本のインテリアの歴史について、道立図書館で調べていたとき「北海道ノ冬季住居ニ関スル調査竝ニ研究」(北海道庁衛生課/1938年発行)という資料に出合いました。「窓掛ケノ有無ト保温関係」の実験結果が載っていて、窓に白色天竺木綿(薄手の平織コットン生地)を1枚張るだけで、室温が平均3・9度上がり保温効果が大きいと記されています。
このデータが市民に伝わっていたら、多くの人が暖かい冬を過ごせたかもしれません。第二次世界大戦直前の研究だったことや、同7月に綿の民間需要の禁止令が出され、2年後には絹織物も禁止され、さらにカーテンの製造加工も止められ、カーテンは市民の暮らしから遠のいていきました。
一般住宅でカーテンが使われるようになったのは1950年代に入ってからのことです。住宅の洋風化が進んだため、国内メーカーがカーテンレールを製造したり、求めやすい価格帯のカーテン生地が出回るなど、ウインドートリートメント素材が増え、多くの住まいの窓にカーテンが掛けられるようになりました。
北海道庁衛生課の実験の感想に、建物構造の欠陥や窓の一重が問題点と記述されています。現在の住宅は、当時の住まいからは想像できないほどの高気密高断熱で、冬も暖かく過ごせるようになりました。ガラスの性能もよくなり、窓から発生するコールドドラフト(下降冷気)は、軽減されています。それでも、ガラス面が見える窓より、カーテンが掛かっている窓の方が、何となく暖かそうに感じます。
布地は繊維と繊維の間に空気を抱えていますが、グラスウールのような厚みをカーテンに求めるのは無理があります。カーテンは見た目の美しさも大事です。保温効果を高める方法の一つは「レース+ドレープ」の二重掛けで、2枚の生地の間に空気の層を作ることで熱の移動を抑えます。さらにドレープに裏地を付けると空気の層が増え、熱移動はより少なくなります。
また、今人気のフラットカーテンより、「ひだ」のある従来からのカーテンの方が全体で保有する空気の量が多くなり、保温効果は大きくなります。レースや裏地は薄い生地ですが、いい仕事をしているなぁと感じます。
床までの丈のカーテンにすると、ほぼコールドドラフトは止めることができます。ドレープの左右の幅を広めにして壁に沿わせる「リターン」を作ると、左右の空気の移動を防ぎますし、カーテンレールの上部をふさぐ専用プレートや、カーテンを天井から下げる方法なども保温効果を高める手法です。
窓下にパネルヒーターがある場合は、カーテン寸法を考慮してヒーターの高さを決めると、見た目のバランスがよく、冷気も止められます。パネルヒーターにカーテンがかぶってしまうと、熱でカーテン生地が変形することがありますし、暖気が逃げてしまうので要注意です。
(北海道建設新聞2021年12月9日付3面より)