SDGs達成に貢献する商材
ウッドファイバー(本社・横浜)は、蓄熱や吸音性に優れる木質繊維の断熱材を製造・販売する会社で、苫小牧に北海道工場を構える。ぬくもりや静けさなど森林に似た環境を住宅内に設けられるほか、カビやウイルスが生存しにくい調湿性能もあり、コロナ禍で再注目される。製造時の燃料にバーク(樹皮)を使用。ロックウールやグラスウール系の断熱材のように廃棄時に埋め立て処分せずに済み、最近はSDGs達成のための貢献商材としてアピールする。
2007年に「株式会社木の繊維」として創業した。ドイツ・ホーマテルム社の製造技術を導入し、09年に北海道工場を完成させる。18年に建築用木材の流通などを手掛けるナイス(本社・横浜)グループ会社のウッドファイバーが事業を受け継ぎ、現在に至る。
北海道工場は苫小牧市植苗の敷地2万5050m²に位置し、延べ5700m²の規模。大きく分けて熱を作り出すバイオマスボイラのほか、蒸気で柔らかくなったチップを刃物の回転で繊維化するリファイナー、繊維をプレスして固着化する成形ユニットの3工程から成る。
製造する木質繊維の断熱材「ウッドファイバー」は、カラマツやトドマツなど道産針葉樹のチップを繊維化し、断熱材用に成形した製品。蓄熱性能が最大の特長で、冬は暖房で暖めた部屋が朝まで冷めにくく、夏は外の熱を室内に通しにくい。家の中の温度変化が少なく、放射熱などによる体感温度の効果から快適な住まい環境を得られる。
木ならではの調湿性能も特長。部屋の湿気を吸放湿して室内でカビやダニ、ウイルスが発生しないよう働く。結露が起きにくいため、建物の資産価値を守る点でも効果を発揮する。加湿器や除湿機を使わなくて済むため、月々の電気代の削減にもつながる。
森の中にいるような吸音性も長所。建築資材として安全性を担保するため、リン酸アンモニウムなどの難燃剤を添加することで防火性能を確保したり、目薬などに使われる消毒液のホウ酸を加えることで、シロアリなどの被害から守るよう配慮する。
最近は、木質を重視する足寄町のホテルや健康志向の当別町のアパートで採用された。各地の森林組合や木材会社と連携したOEM展開も力を入れる。地方の森林組合などから木材を一度預かり、同社の北海道工場でウッドファイバーにOEM生産し、製品として返納する流れ。地域の森林組合や木材会社、建設会社、工務店などに地材地消ブランドとして使ってもらえればと考える。
事業継承した18年以降は、製品の良さを客観的に伝えるため、第三者の研究機関や採用先の協力を受けながら、各機能のデータ取りを重ねた。京大では構内に試験棟を設けてもらい、梅雨時の室内環境の推移などを確認。断熱改修した古民家や新築したレストハウスでは、欧米で広く使われている解析プログラムを使って、建材の違いによる壁構造全体の温・湿度などを検証した。
価格は、高性能グラスウール断熱材に比べ2倍から3倍ほど。これまで断熱性能とコストのみで競えば、安価な普及品との勝算は低かった。しかし、蓄熱性や調湿性など多機能面をPRすれば、高い支持を得られるとみる。全国に構えるナイスグループの物流網を生かせることは、コスト面で強みになる。
田原武和社長は「これまではエビデンス(裏付け)をそろえる3年半だった。木造・木質化の推進やSDGsなど世の中の流れは追い風になっていて、住宅と非住宅の両方でウッドファイバーを浸透させたい」と意欲を見せる。
(北海道建設新聞2021年12月20日付3面より)